文学・文学史

“単純ではない平易な文章が望まれるとすれば、その平易は、自分に即して生まれた必然性のある平易に限り有効である” 『「やさしい古典案内」のこと』 耳目抄310 竹西寛子 ユリイカ 2013年6月

ユリイカ 2013年6月号 特集=山口昌男 道化・王権・敗者作者: 高山宏,中沢新一,上野千鶴子出版社/メーカー: 青土社発売日: 2013/05/27メディア: ムックこの商品を含むブログ (9件) を見る「特集=山口昌男 道化・王権・敗者」ということで,久しぶりに手にとっ…

“ぼくは思いだす、ベンヤミンよりわずか若く、一九一九年に二0歳の無名の詩人だったベルトルト・ブレヒトが、ローザと革命の敗北とを悼む「くれないのローザのバラード」を書いた、といわれていることを。” 『 バイエルン革命と文学  (1981年)  (白水叢書〈52〉) 』 野村修 白水社

バイエルン革命と文学 (1981年) (白水叢書〈52〉)作者: 野村修出版社/メーカー: 白水社発売日: 1981/02メディア: ? クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る1981年1月刊.同年3月読了とある.恐らく大学生協で購入して読んだもの.山口昌男の著作で…

“沖縄の悲劇は、沖縄の人々がどんなに抗議しても、日米間の政治家には届かないのだ。『運命の人』を書いた私は無力感にうちひしがれている” 『「大地の子」と「運命の子」』 山崎豊子 文藝春秋 2013年 01月号

文藝春秋 2013年 01月号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/12/10メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (7件) を見る文藝春秋創刊90周年記念にあたって,特別寄稿「文藝春秋と私」が掲載されているもののうちの一つ.他…

“いつも山峡の大きい自然を、自らは知らぬながら相手として孤独に稽古するのが、彼女の習わしであったゆえ、撥の強くなるは自然である。その孤独は哀愁を踏み破って、野性の意力を宿していた” 『雪国  (新潮文庫 (か-1-1)) 』 川端康成 新潮社

雪国 (新潮文庫 (か-1-1))作者: 川端康成出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/05メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 118回この商品を含むブログ (196件) を見る小説はあまり読まないのだが.しかし,この歳でよりによって『雪国』とは我ながら驚きである.…

“癩病患者の収容の歴史をふり返ってみるとき、瞭然と浮かび上がってくるのは、...諸外国への体面から癩者をまるで虫げらのように踏みにじってきた、ファシズムとしての医療のあからさまな姿である” 『火花―北条民雄の生涯』 高山文彦 七つ森書館

火花―北条民雄の生涯 (ノンフィクション・シリーズ“人間”)作者: 高山文彦出版社/メーカー: 七つ森書館発売日: 2012/10メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る1999年初版の古い本である.文庫化を経て,七つ森書館という出版社2012…

“明治人は過剰なまでに果断であった。(略)明治日本もまた過剰なまでに果断であった” 【津田梅子 日本語が得意でなかった武士の娘】 『「一九〇五年」の彼ら』 関川夏央 NHK出版

「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)作者: 関川夏央出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/05/08メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る本書の第二章 「津田梅子 日本語が得意でなかった…

“遺言にあらわれているものは、すさまじいまでの孤独感である。枯寂といってもよいであろう” 【森鴎外 熱血と冷眼を併せ持って生死した人】『「一九〇五年」の彼ら』関川夏央 NHK出版

「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)作者: 関川夏央出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/05/08メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る本書の第一章 森鴎外 熱血と冷眼を併せ持って生死…

“しかし私は、「愛というイデオロギー」に殉じようとした高度な緊張感と、そのためにもたらされたアトリエ内部の「冷ややかな暗さ」を、智恵子変調の原因に加えたい誘惑にかられる” 【高村光太郎 日本への愛憎に揺れた大きな足の男】『 「一九〇五年」の彼ら』 関川夏央

「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)作者: 関川夏央出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/05/08メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る本書の第七章 高村光太郎 日本への愛憎に揺れた大…

“彼女は偉大な妻であり、偉大な母であった。しかし、文学上の仕事は、『みだれ髪』刊行からこの〇五年までの五年間がピークであった” 【与謝野晶子 意志的明治女学生の行動と文学】 『 「一九〇五年」の彼ら』 関川夏央 NHK出版

「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)作者: 関川夏央出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/05/08メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る本書の第八章 『与謝野晶子 意志的明治女学生の行…

“「坂の上の雲」をのみ見つめて坂をのぼった人々が坂の上でみたものは何か。そこにはもはや輝く白い雲はなく、ただ人々は雨の中、坂をくだっていくことになる” 『坂の上の雲はどうなったのか』 和田春樹 図書 2012年 04月号 岩波書店

図書 2012年 04月号 [雑誌]出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/03/29メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る故司馬遼太郎は,優れた作家であり,多くの読者を持っているが,その内容については,心酔する人がいる一方で,その歴史観に対して批…

“『坊っちゃん』は、実のところ、女性をカヤの外に置いた、男たちの未熟な自己陶酔的正義感のオンパレードにすぎないのではないか” 『恩を仇で返す気はないけれど』 本と私の時間25 佐伯順子 図書 2012年 01月号 岩波書店

図書 2012年 01月号 [雑誌]出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2011/12/26メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る今月の『図書』の中から,比較文化の佐伯順子による小文,『恩を仇で返す気はないけれど』. 小さい頃,慣れ親しんだ世界の名作数々…

“僕は寺山の後継だと言えるのは、園子温一人だと思っています” 『自由になりたければ、不自由になれ』 宮台真司 in 『寺山修司の時代 (文藝別冊) (KAWADE夢ムック 文藝別冊)』 河出書房新社

寺山修司の時代 (文藝別冊) (KAWADE夢ムック 文藝別冊)出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/09/16メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る寺山修司ものは,かなり持っていて,かなり読んでいる.存命の頃か…

“ダイモーンに対して取りうる最上の態度とは、それを避けることではなく、その声を耳を澄ませて聴き、そのいわんとするところを理解することだ。悲劇とは、自分のダイモーンを自覚できなかった者たちの敗北の物語にすぎない” 『再会と別離』 四方田犬彦, 石井睦美 新潮社

再会と別離作者: 四方田犬彦,石井睦美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る50を越えた人間二人が,再会し,自身の別離と,そして再開を語る.齢50を越えた人だけが語ることので…

“性の世界は、同じ心理的な磁場にいる人々にとっては「生きる喜びの表れ」だが、その磁場から一歩離れたところに立つ者からは、下品で、レベルの低い人間の所行とされがちなのである” 『盆踊り 乱交の民俗学』 下川耿史 作品社

盆踊り 乱交の民俗学作者: 下川耿史出版社/メーカー: 作品社発売日: 2011/08/19メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 36回この商品を含むブログ (4件) を見る本屋さんで,帯を見てびびってはいけない. 帯表より 〈盆踊り〉とは、 生娘も人妻も乱舞する “乱…

“しかし、〈性〉が人生にもたらすさまざまなことを書いてみたい欲求が、あまり使いたくない言葉だが、晩年の彼女にはとても強くあった” 『名文探偵、向田邦子の謎を解く』 鴨下信一 いそっぷ社

名文探偵、向田邦子の謎を解く作者: 鴨下信一出版社/メーカー: いそっぷ社発売日: 2011/07メディア: 単行本 クリック: 34回この商品を含むブログ (6件) を見る 2016.6.16 再追記 ナレーションの引用、正確なテキストを教えてもらいましたので、書き換えまし…

“人を信ずれば友を得、人を疑へば敵を作る” 『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』 黒岩比佐子 講談社

パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い作者: 黒岩比佐子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/10/08メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 155回この商品を含むブログ (69件) を見る 大作,労作である.おそらく著者の頭の中には,大正から昭和に…

“文学の責務は良心と道義的な覚醒に向けて、不正に対する憤りと被害者に寄せる共感に裏打ちされた敏感さの拡張に向けて、目覚ましのベルを鳴らす工夫をすることです” 『この時代に想うテロへの眼差し』 スーザンソンタグ, Susan Sontag, 木幡和枝訳 NTT出版

この時代に想うテロへの眼差し作者: スーザンソンタグ,Susan Sontag,木幡和枝出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2002/02メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 26回この商品を含むブログ (21件) を見る9.11のあと,大統領以下国民全体が熱に浮かされている中,…

“人生は哀しみとともに歩むものだが、決して悲嘆するようなことばかりではない” “ ただ私は一冊の、一行の言葉が、人間に何かを与え、時によっては、その人を救済することがあると信じている” 『なぎさホテル』 伊集院静 小学館

なぎさホテル作者: 伊集院静出版社/メーカー: 小学館発売日: 2011/07/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 8回この商品を含むブログ (11件) を見る伊集院静が,作家としての地位を確立する前の若い頃,7年間をすごしたという「なぎさホテル」,このホテ…

“文学は、ある意味では勝利者の手によってつくられてゆく歴史への反逆である” 『マラーノの系譜  (みすずライブラリー) 』 小岸昭 みすず書房

マラーノの系譜 (みすずライブラリー)作者: 小岸昭出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1998/06メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る初刊1994年,手元にあるのが1998年の版だから,読んだのはずいぶん昔になる.私にとって.こ…

“人間は表流水ばかりに気をとられないで、時には自分の川底をひっくり返して攪拌しなければいけないのかもしれない。” 『腰痛放浪記 椅子がこわい  (新潮文庫) 』 夏樹静子 新潮社

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)作者: 夏樹静子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/07/30メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 118回この商品を含むブログ (34件) を見る初出は,『椅子がこわい 私の腰痛放浪記』(文藝春秋,1991年刊)である. 世の中…

“永年の論争に終止符を打つ. 日本文学史上最大の謎,森鴎外「舞姫」モデルついに発見” 『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』 六草いちか 講談社

鴎外の恋 舞姫エリスの真実作者: 六草いちか出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/03/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 36回この商品を含むブログ (12件) を見る2ヶ月ほど前に,『鴎外の恋人―百二十年後の真実』 今野勉 日本放送出版協会を読んだばか…

“恋が言わせる付けことば”  『赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い』 赤川次郎 小学館文庫

赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い (小学館文庫)作者: 赤川次郎出版社/メーカー: 小学館発売日: 2007/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (17件) を見る文楽にはまる,ということがあるらしい.かくいう私もその一人…

“古い病気に新しい治療法が見つかる.すばらしい.でも,無慈悲で,残酷な世界でもある.”  『わたしを離さないで  (ハヤカワepi文庫) 』 カズオ・イシグロ  土屋政雄 訳 早川書房

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/08/22メディア: 文庫購入: 32人 クリック: 197回この商品を含むブログ (312件) を見る(原題:Never let me go) 2011.4.17追記 【NHK ETV特集…

『人生という作品』 三浦雅士 NTT出版

人生という作品作者: 三浦雅士出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2010/03/26メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (6件) を見る三浦雅士が白川静について書いているので思わず買ってしまった.まずタイトル「人生という作品」と装幀…

『ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング (文春文庫)』 久世光彦 文藝春秋

ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング (文春文庫)作者: 久世光彦出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/09/04メディア: 文庫 クリック: 8回この商品を含むブログ (6件) を見る私が15年前に読んだのは,『マイ・ラスト・ソング―あなたは最後に何を聴きたいか …

『恋の隠し方 ― 兼好と「徒然草」』 光田和伸 青草書房

恋の隠し方 ― 兼好と「徒然草」作者: 光田和伸出版社/メーカー: 青草書房発売日: 2008/06メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を見るなんでまた,齢50を過ぎて今頃「徒然草」なのか.徒然草をつれずれなるままに書いたエッセーのたぐ…

『妻との修復 (講談社現代新書)』 嵐山光三郎 講談社

妻との修復 (講談社現代新書)作者: 嵐山光三郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/03/19メディア: 新書購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (8件) を見る嵐山光三郎は天才ではないかと思う.不良中年を自称し,本人が道楽というところのものにう…

“大逆事件を機に顕わになった,あらゆる「理想」と「虚構」の「不可能性」を歴史的に隠蔽する『坂の上の雲』のような作品に,国民が熱狂していることが,おぞましく感じられたからである” 『文学者たちの大逆事件と韓国併合』  高澤秀次 (平凡社新書)

文学者たちの大逆事件と韓国併合 (平凡社新書)作者: 高澤秀次出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2010/11/16メディア: 新書購入: 3人 クリック: 24回この商品を含むブログ (10件) を見る 高々100年前のこと,それも日本のことなのに,自分が何も知らないでいた…

『鴎外の恋人―百二十年後の真実』 今野勉 日本放送出版協会

鴎外の恋人―百二十年後の真実作者: 今野勉出版社/メーカー: 日本放送出版協会発売日: 2010/11/20メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (9件) を見る良質のミステリを読むような面白さである.本書は,NHKハイビジョン特集「鴎外の恋人 百二十…