評伝

“田中は何としても安保条約を通さなければいけない、軍備費用を復興に費さなければならない、日本の経済的な繁栄のためにも必要なんだといぅ信念を持っていた” 『決定版 私の田中角栄日記』 (新潮文庫) 佐藤昭子 新潮社

決定版 私の田中角栄日記(新潮文庫)作者: 佐藤昭子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/11/18メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るちょっとした角栄ブームということもあり、書店に関連本が並びだした頃、ブームとはまだ気がつかずに手に取った…

“ナチス•ドイツの焚書は、世界の注目を集めた。最も早く、最も痛烈な非難の声をあげたのはフランスであった” 『ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫) 』 角田房子 新潮社

ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)作者: 角田房子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1985/02メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る1982年刊の本である『本は、これから (岩波新書) 』(池澤夏樹編)に寄せた,最相葉月の文章で,ミチコ・タ…

“どんなことも、私たちが共に過ごした人生を、私たちが共になしとげたすべてを、私とエリ―から奪うことはできない。私たちは決して、別々になることはないんだ” 『フランクル『夜と霧』への旅』 河原理子 平凡社

フランクル『夜と霧』への旅作者: 河原理子出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2012/11/24メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (8件) を見るフランクルの私生活は,その著作ほどには知られていない.家族などいろいろな人へのインタビューが本…

“利用者の人生を知ることで、介護する側が変わる。たとえ徘徊などの“問題行動”があっても、それまでの人生でどんな苦労をしてきた人なのかを知れば、上から見下す目線にはなりえない” 『介護の庭に眠っていた民俗学  現代の肖像:民俗研究者 六車由美』 横田増生

AERA (アエラ) 2013年 6/10号 [雑誌]出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/06/03メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る六車由美氏の『驚きの介護民俗学』は,この半年の間,様々な書評で取り上げられ,ずっと気になっていた書物である.こ…

“これは高野さんが続けてきたエキプ・ド・シネマへの信頼感がもたらした結果だったと思う” 『高野悦子さんを悼む  映画作家の心届けた人』 羽田澄子 朝日新聞 2013年2月19日

岩波ホール総支配人の高野悦子さんが亡くなった.氏の,『母 老いに負けなかった人生 (岩波現代文庫)』を読んだばかりだったと言うこともあるが,何より,岩波ホールの映画に精神形成の幾ばくかを負っていると自覚するものにとって,感慨深いものがある.『…

“大正という時代は明治の生真面目さが熔解しはじめた時期である” 『伊藤野枝と代準介』 矢野寛治 弦書房

伊藤野枝と代準介作者: 矢野寛治出版社/メーカー: 弦書房発売日: 2012/10/19メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 3回この商品を含むブログを見る 時代の空気をつかむのは難しい.大正という激動の転換期.その時代をよむことができる.大杉栄ととも…

“ふたりに敬意を表すべきは、輝かしい業績ではなく、「自由」を得るために、長いあいだ地道に行われつづけた壮絶な「稽古」にある、と私は思うのである” 『「加藤周一」という生き方 (筑摩選書)』 鷲巣力 筑摩書房

「加藤周一」という生き方 (筑摩選書)作者: 鷲巣力出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/11メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る日本を代表する知識人であった,加藤周一.予備校時代,国語のたいへん出来る友人がいて,彼が…

“人が人を本当に好きになるということは、こんなにもその人生に深く根をおろすものなのか” 『中村勘三郎の「告白」 関容子 文藝春秋 2013年 02月号

文藝春秋 2013年 02月号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/01/10メディア: 雑誌 クリック: 6回この商品を含むブログ (2件) を見る「太地喜和子との本物の恋」と副題のある,ノンフィクション作家関容子による文章. 師走に急逝した第十八代中村…

“戦争が煽り立てる「明快さ」が、ある種大きな解放感をもたらすものであること、どのような社会にも、戦争に加担することによって暖昧さや迷いを解消してしまえるという誘惑があること” 『娘の眼から―マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンの私的メモワール』 メアリー・キャサリンベイトソン, 佐藤良明, 保坂嘉恵美訳 国文社

娘の眼から―マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンの私的メモワール作者: メアリー・キャサリンベイトソン,Mary Catherine Bateson,佐藤良明,保坂嘉恵美出版社/メーカー: 国文社発売日: 1993/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ…

“癩病患者の収容の歴史をふり返ってみるとき、瞭然と浮かび上がってくるのは、...諸外国への体面から癩者をまるで虫げらのように踏みにじってきた、ファシズムとしての医療のあからさまな姿である” 『火花―北条民雄の生涯』 高山文彦 七つ森書館

火花―北条民雄の生涯 (ノンフィクション・シリーズ“人間”)作者: 高山文彦出版社/メーカー: 七つ森書館発売日: 2012/10メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る1999年初版の古い本である.文庫化を経て,七つ森書館という出版社2012…

“若沖は絵を売って生活をする画家ではなかった。しかし、注文がひきもきらずになったとき「斗米庵」と称して、一斗の米代で売るという行為の背景に、売茶翁のすがたをうかうことは、もはや当燃のことというべきだろう” 『若冲 ――広がり続ける宇宙 Kadokawa Art Selection (角川文庫) 』 狩野博幸 角川書店

若冲 ――広がり続ける宇宙 Kadokawa Art Selection (角川文庫)作者: 狩野博幸出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/05/25メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 35回この商品を含むブログ (11件) を見る若冲ブーム仕掛け人といわ…

“日本の国民にはわからないけれど、北朝鮮、韓国、中園、ロシアとは本当に仲良くしておかなければ、将来日本の国は危ない” 『聞き書 野中広務回顧録』 御厨貴, 牧原出 岩波書店

聞き書 野中広務回顧録作者: 御厨貴,牧原出出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/06/29メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (1件) を見る抜群に面白い.一人の政治家の思いが,時代の流れに沿って,回想という形で語られる.聞き手,とい…

“明治人は過剰なまでに果断であった。(略)明治日本もまた過剰なまでに果断であった” 【津田梅子 日本語が得意でなかった武士の娘】 『「一九〇五年」の彼ら』 関川夏央 NHK出版

「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)作者: 関川夏央出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/05/08メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る本書の第二章 「津田梅子 日本語が得意でなかった…

“遺言にあらわれているものは、すさまじいまでの孤独感である。枯寂といってもよいであろう” 【森鴎外 熱血と冷眼を併せ持って生死した人】『「一九〇五年」の彼ら』関川夏央 NHK出版

「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)作者: 関川夏央出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/05/08メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る本書の第一章 森鴎外 熱血と冷眼を併せ持って生死…

“漢籍的教養の上に西欧的教養を積んだものたちが「明治一五年以前生まれ」なら、白紙の上に西欧的教養を積んだのが「明治一五年以後生まれの青年たち」であろう。武士的道徳が消滅したのち、大衆的流行文化と経済万能主義の大波を浴びつつ人となった世代、ということでもあろう” 『 「一九〇五年」の彼ら ― 「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378) 』 関川夏央 NHK出版

「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)作者: 関川夏央出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/05/08メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る1905年(明治38年)に壮年期を迎えていた彼ら,日…

“見る存在である君は 見られる存在でもある” 『免疫学の巨人イェルネ』  トーマス・セデルキスト,宮坂昌之監修, 長野敬, 太田英彦訳  医学書院

免疫学の巨人イェルネ作者: 宮坂 昌之,長野 敬,太田 英彦出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見るScience as Autobiography: The Troubled Life of Niels Jern作者: Thomas Soederqvist,D…

“いつの時代も、てらいのないまっすぐな理想と抱えきれぬほどの自負、現状のまっこう否定は、若き後継者たちの特権なのである” 『君は隅田川に消えたのか 藤牧義夫と版画の虚実』 駒村吉重 講談社

君は隅田川に消えたのか -藤牧義夫と版画の虚実作者: 駒村吉重出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/05/13メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 68回この商品を含むブログ (18件) を見るそれほど期待して買ったわけではなかった.帯に洲之内徹の名前がなけれ…

“本書が多くの人に受け入れられたのはそういうことだ” 『激しい愛憎と情念の世界』 (『あんぽん 孫正義伝』佐野眞一著 に対する書評) 佐々木俊尚 朝日新聞 2012年2月13日朝刊

あんぽん 孫正義伝作者: 佐野眞一出版社/メーカー: 小学館発売日: 2012/01/10メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 205回この商品を含むブログ (63件) を見るここでとりあげるのは,『あんぽん 孫正義伝』(佐野眞一著)に対する朝日新聞の書評.〈売れてる…

“『お母さん、ぼくには何の財産も残さなくていいよ。ぼくは何もいらない。その代わり、勉強の面倒だけは見てください』” 『あんぽん 孫正義伝』 佐野眞一 小学館

あんぽん 孫正義伝作者: 佐野眞一出版社/メーカー: 小学館発売日: 2012/01/10メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 205回この商品を含むブログ (63件) を見る存命中の人の評伝を書くことは難しい.褒めるにしろ,けなすにしろ,自身の見解を率直に表現するこ…

“世の中には、こういうこともあるのである” 『野口英世』 in 『明治の人物誌  (新潮文庫)』 星新一 新潮社

明治の人物誌 (新潮文庫)作者: 星新一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1998/04メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (20件) を見る明治の人物誌 (上) (大活字本シリーズ)作者: 星新一出版社/メーカー: 埼玉福祉会発売日: 2005/05メデ…

“死者は永遠に去って、生者に語りかけには絶対戻って来ない、と思うのは、明らかに間違っている。死者は生者に語りかけに戻ってくる。それこそが彼らのすることだし、死者の主な仕事と言っても良い。” 『アンドレとシモーヌ―ヴェイユ家の物語』 シルヴィヴェイユ, Sylvie Weil,稲葉延子 春秋社

アンドレとシモーヌ―ヴェイユ家の物語作者: シルヴィヴェイユ,Sylvie Weil,稲葉延子出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2011/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 27回この商品を含むブログ (12件) を見るヨーロッパ,特に,フランスを主たる住処としたユダ…

“居間中心住宅の主張は、伝統的な男女観.人間観の転換を求める主張を暗に含んでいる。そしてそのことは容易に国家のあり方までもつながってしまう。” 『愉快な家  西村伊作の建築 (INAX BOOKLET) 』 黒川創, 藤森照信, 坂倉竹之助, 大竹誠, 田中修司, 住友和子編集室,

愉快な家 西村伊作の建築 (INAX BOOKLET)作者: 黒川創,藤森照信,坂倉竹之助,大竹誠,田中修司,住友和子編集室,村松寿満子,INAXギャラリー企画委員会,普後均出版社/メーカー: INAXo発売日: 2011/03/10メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 12…

“真正直な人間を騙すのは不可能だ。詐欺師の詐欺を可能にしているのは、気の毒な被害者がもつ強欲と、留まることのない想像力と、また窮地から脱しようと夢見る希望なのだ” 『偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件』 レニーソールズベリー, アリースジョ, 中山ゆかり訳 白水社

偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件作者: レニーソールズベリー,アリースジョ,中山ゆかり出版社/メーカー: 白水社発売日: 2011/08/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る原題は,"Provenance: How a Con Man and a Forger Rewrote the Hi…

“網野さんが豊かな想像力と批判精神をとおして創造しようとした歴史学は、墓石も記念碑も土の下に埋葬されてきた人間たちのために、記憶の大地にみずみずしい花を咲かせようとすることだった” 『僕の叔父さん 網野善彦  (集英社新書) 』 中沢新一 集英社

僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書)作者: 中沢新一出版社/メーカー: 集英社発売日: 2004/11メディア: 新書購入: 5人 クリック: 42回この商品を含むブログ (131件) を見る網野善彦は中沢新一の叔父さんだった.網野善彦の死後,若き日の交流を思い出とともに…

“今もなお部厚い悪評の層に覆われた笹川良一像の真の姿を掘り起こしてみたかった” 『悪名の棺―笹川良一伝』 工藤美代子 幻冬舎

悪名の棺―笹川良一伝作者: 工藤美代子出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2010/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 72回この商品を含むブログ (29件) を見る毀誉褒貶の激しい人である.マスコミからもタブー視されていたという.だから手に取るのはちょっと…

“ブルジョアの排撃,つまり、全体主義の時代風潮とは、そのようなかたちで、大衆の側からの「平等」への願いを含んでいる” 『きれいな風貌―西村伊作伝』 黒川創 新潮社

きれいな風貌―西村伊作伝作者: 黒川創出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/02メディア: 単行本 クリック: 29回この商品を含むブログ (11件) を見る 小説家の手によるものだけあって,端正できれいで優しい文章でつづられた,西村伊作の評伝である.「きれい…

“チェイニー長官と私は四年近くも一緒に仕事をしていながら,純然たる懇親の時間は一時間たりとももてなかった” 『策謀家チェイニー 副大統領が創った「ブッシュのアメリカ」』  バートン・ゲルマン  (朝日選書)

策謀家チェイニー 副大統領が創った「ブッシュのアメリカ」 (朝日選書)作者: バートン・ゲルマン,加藤祐子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2010/10/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 25回この商品を含むブログ (8件) を見る予想より読み切るのに…