『人生という作品』 三浦雅士 NTT出版
- 作者: 三浦雅士
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2010/03/26
- メディア: 単行本
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表題でもある「人生という作品」の章では,実は,「現代人のほとんどが,自分は死後も生きていると密かに考えている」のであり,それゆえ「作品としての人生は,霊魂としての人生の変容である」という.
そう簡単に読み飛ばすことはできないのだが,「人間の自由はむしろ過去へ向かって開かれている.人はただ,歴史を書き変えるように,未来を書き変えるのである.」だけ引いておこう.この読書記録もしかりである.
さて,白川静に関するのは,「白川静問題」「起源の忘却」の二つの章である.
前者では,白川静の学問的立ち位置を,吉川幸次郎,貝塚茂樹のそれと比較し,白川静の孤立,自己完結性を論じる.
白川静は良くも悪しくも詩人であった.近代的な意味での詩人であった.内藤湖南であれば,『字統』『字訓』はともかく,『字通』をただひとりで書き上げるようなことはしなかっただろう.『字通』一巻は,およそ古代的ではない,まさに近代的というほかない作者概念,作品概念に貫かれているのである.そしてそれは炎のような詩的直感を核心に秘めているのだ.
むろんそれは,白川静が自ら好んで孤立を選んだことと別のことではなかったのである.
二つ目の「起源の忘却」も魅力的,且つ刺激的な論考である.
白川静の仕事でもっとも重要なことは漢字の起源を解明したことでは必ずしもない.むしろその起源がまたたくまに忘却された,あるいは隠蔽されたという事実を見いだしたことである.
そして
象形から形声にかけて起こったことは,文字が果たした最初の役割を忘れることだったと言っていい.忘れたからこそ,声に出すことができるようになったのである.
という.
毎日新聞 2010年10月24日 東京朝刊に,山崎正和氏による書評『逆説をちりばめた強靱な思索』が載っているのですね.さすがにすばらしい書評です.
【読んだきっかけ】書店にて.
【一緒に手に取る本】
- 作者: 白川静
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