“恋が言わせる付けことば”  『赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い』 赤川次郎 小学館文庫

赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い (小学館文庫)

赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い (小学館文庫)

文楽にはまる,ということがあるらしい.かくいう私もその一人である.きっかけは,なんと娘の通っていた幼稚園(!)での公演である.後にしったことであるが,現在でも文楽の座が全国に数十も残っているらしい.幼稚園児に浄瑠璃を聞かせてどうなるのか,と思ったものであるが,あらかじめあらすじを予習しておけば,あとは人形劇だから意外と楽しめたりするものなのだ.それに何より,生の浄瑠璃と三味線はすばらしい.本書で,赤川氏は「小学生くらいの子供には,やはり文楽の良さを分からせようとしても無理だと思う.」と書いているが,もっと見せてもいいように思う.

今でも,女流の義太夫はいるらしいが,大正時代には,全国的なブームになったらしく,現代のアイドルさながらである.そのへんの事情は,『知られざる芸能史 娘義太夫―スキャンダルと文化のあいだ (中公新書)』(水野悠子著)に詳しい.

大阪には国立文楽劇場がある.最近は字幕がでるようになったので,底本を追わなくても済むようになった.私にとって文楽の魅力とは,物語の重層性と浄瑠璃,三味線の音楽性であろう.

単行本は,端正な仕上がりで,所持していたくなるような本.ただ,この文庫本には,桐竹勘十郎赤川次郎の対談が特別付録としてついており,これが魅力である.対談は,2004年10月の「オール読物」に収録されたもの.

歌舞伎との違いについて.

桐竹:...文楽はすべて大夫と三味線が世界をつくってくれるんです.大夫がすべての役の台詞と,いわゆる地の文を語る.ですから,その人たちが小さな世界しかつくってくれへんかったら,もう人形はそこでしか動かれへんのです.逆に大きくてすごい世界を大夫さんがつくってくれると,ぼくらも存分に動けるんですね.文楽はそういう枠の中でしかできないお芝居なんです.

桐竹:師匠は,段取りでやって面白いはずがないっていう考えなんです.歌舞伎は様式でやる,ああいうのは別やけど「人形はもうちょっと生きてないかん」て言うんですね.だから段取りの芝居なんかものすごい怒るんですね.

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