“特に演劇の中継録画の番組がなくなったのは問題で、小劇場での演劇は、NHKの放映がなければ東京以外ではまず見ることができない。演劇文化にとっては大きなマイナスである” 『中身も重要、ハイビジョン』 (三毛猫ホームズと芸術三昧!) 赤川次郎 2011/07/15, 朝日新聞

『中身も重要、ハイビジョン』 赤川次郎 2011/07/15, 朝日新聞
BS放送の改編によって,演劇番組ななくなってしまったことは本当に残念.演劇文化に対する評価が,欧米に比べて日本はなぜこんなにも低いのか.映画,音楽,絵画などに比して,何よりも1回性の芸術である演劇こそ,丹念に拾い上げてアーカイブ化すべきではないのか.それができるのはNHKをおいて他にないであろう.

作家の赤川次郎氏による朝日新聞の連載「三毛猫ホームズと芸術三昧!」から.
30歳まで勤めていたという機械学会における本作りの話から始まって,ブルーレイ,スーパーオーディオCDへと話題が進む.期待通りに売れないのは,多くの人が欲しい,と思うものになっていないからだ,といい,話がNHKのBS放送の改編に至る.

ハイビジョンの映像がどんなに美しくても、見るに値する内容がなければ、空しいばかりだ。
 特に、BS放送のチャンネルがBS1とプレミアムの二つに減ったNHKは首をかしげるような改編ばかりである。特に演劇の中継録画の番組がなくなったのは問題で、小劇場での演劇は、NHKの放映がなければ東京以外ではまず見ることができない。演劇文化にとっては大きなマイナスである。その一方で、BS1はほとんど「スポーツチャンネル」と化し、サッカーや大リーグ、ゴルフに始まって、「Xゲーム」という、スケートボードスノーボードの大会まで放映している。
 世界情勢や社会問題に切り込むドキュメンタリーの担い手というNHKの役割はどこへ行ったのか。

公共放送のひとつの使命は,全国あまねく受信可能な環境を構築し,少しでも多くの人に価値ある内容のプログラムを提供することであろう.と同時に,日本のそこかしこから,情報を収集し,それを番組として構築することも重要な使命である.すなわち,情報の集め方にも公共放送としての責務があるであろう.コマーシャリズムにはのりにくいけれど,国民的価値,国家的価値があるものを丹念に映像化すべき責任があるだろう.

【関連読書日誌】
“恋が言わせる付けことば”  『赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い』 赤川次郎 小学館文庫
【読んだきっかけ】
最近新聞を読む機会が減って困っているのだが,たまたま読んだ記事.
【一緒に手に取る本】

赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い (小学館文庫)

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恐くて不思議な話が好き―白石加代子の百物語

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