“良心的な科学者ほど、このままでは地球がダメになるというはっきりしたデータがでるまで、絶対にそれを認めません。そして、彼らがもうダメだと認めたときには、すでに手遅れの時なのです。” 『しあわせ節電』 鈴木孝夫 文藝春秋
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その先生が,こういう哲学を持っておられたこと,こういう活動を長い間実践してこられたことを,今回初めて知った.
今回の震災で,国道246号線に詰まる自動車群と,歩道のあふれんばかりの人の群れを見たとき,1945年の東京大空襲の時に,厚木大山街道を逃げてくる人の群れを思いだしたという.
「地球はタイタニック号だ」著者は,1926年生まれ.一昔前,囲炉裏端でで聞いたような古老の夜話だと思って聞いて欲しいという.
氏が,信念に基づいて続けてきたこと.
- 流行は戻ってくる.洋服は,世代を越えて受け継いでいく.
- 捨てられた電気製品は,拾って修理し,リサイクルする.
- 鉛筆は学内で拾う.
- 犬の散歩がてら古紙を拾い集める.毎月の目標は500キロ!
自らドン・キホーテの有言実行と言っているように,特に,バブルの時代,こうした主張,そしてなにより実際の行動は,かなりの変わり者,と見られてきたに違いない.だからこそ,今,この古老の夜話は,説得力をもち,聞く価値を持つ.
ここまで発展してきたのは、科学の力ですからいずれ人間の英知がこれらの問題をも解決してくれると考える方も多いでしょう。しかし、私はそういう科学信仰を信用しません。というのも良心的な科学者ほど、このままでは地球がダメになるというはっきりしたデータがでるまで、絶対にそれを認めません。そして、彼らがもうダメだと認めたときには、すでに手遅れの時なのです。
「良心的な科学者ほど」というところがポイントである.科学の万能性は,「科学」そのものの中で既に否定されてしまっているのかもしれない.自由主義が自由を否定する自由を認めざるを得ないように.
【関連ブログ】
- “科学(者)への信頼は,何が確実に言えて,何が言えないか,それを科学者自身が明確に述べるところに成り立つといえる。科学とは,まずなによりも《限界》の知であるはずである” 『見えないもの,そして見えているのにだれも見ていないもの』 鷲田清一 科学 2011年 07月号 岩波書店
- “過去五十年、欧米人と議論や口論になった場面で、私は負けたことがない” 『言葉でたたかう技術』 加藤恭子 文藝春秋
- “今回の大災害は、これまで通用してきたほとんどの言説を無力化させた。それだけではない。そうした言葉を弄して世の中を煽ったり誑かしたりしてきた連中の本性を暴露させた。” 『津波と原発』 佐野眞一 講談社
- “古い病気に新しい治療法が見つかる.すばらしい.でも,無慈悲で,残酷な世界でもある.” 『わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) 』 カズオ・イシグロ 土屋政雄 訳 早川書房
【読んだきっかけ】
文藝春秋2011年7月号「日本人が英語で相手を言い負かす方法」と題する氏の一文がきっかけ.
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人にはどれだけの物が必要か―ミニマム生活のすすめ (中公文庫)
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