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“Try very hard not to be dull. Whatever you do with yourself, do your best to be interesting and to make your life interesting.” 『ビフテキと茶碗蒸し―体験的日米文化比較論』 松山幸雄  暮しの手帖社

ビフテキと茶碗蒸し―体験的日米文化比較論

ビフテキと茶碗蒸し―体験的日米文化比較論

座右の書とも言える一冊.松山幸雄氏は1930年生まれで,朝日新聞社のアメリカ総局長,論説主幹を歴任した方.共立女子大教授でもあった.古き良き時代の代表的知識人だろう.章題,小見出しを拾い出すだけでも価値がある.
ビフテキ文化と茶碗蒸し文化
アメリカ胎児の五つの悩み
P.11

アメリカの胎児の四つの悩み、というのがあるそうだ。(1)私は果たして生んでもらえるのだろうか (2)この二人は結婚するだろうか (3)だれが私を育ててくれるのだろうかω両親が何人出来るだろうか……このごろは伺私はエイズにかかっていはしないだろうかというのが加わった、というから、アメリカの赤ちゃんもたいへんである。

無責任な「ノー・プロブレム」/自己顕示と自己卑下/「自由」に「節度」を持たせよう/「つつましさ」と「中庸」が必要/日米ともに体質改善を
気さくさとユーモア
きさくな大先生たち/えらぶらない国際派/「重厚」を目指す「えらい」人/ウィットのないものは政治家になるな/
p.28

ハーバード大の構内を散歩していて、掲示板に「模擬国会弁論部」の部員募集のボスターのあるのが、目に止まった。曰く All but the incurably witless are welcome. (治しがたいほどウイットのない人以外は、だれでも歓迎されます)つまり「タカ派でもハ小派でも、文科系でも理科系でもかまいません。ただしどうしようもなくウィットのないものだけはお断りします」ということなのである。

ネクラ文化よ、さようなら
ぬるま湯がdullな人間をつくる
野茂投手が超「英雄」になるには/「勘定」より「感情」が大事/「興味ある人物」になるよう全力をつくせ
P.39

親日家で知られたヨーロッパからの参加者が怒り出して、事務局に文句をつけた。「日本人の唯一の欠点は、公けの席でdullな話しかしない、ということだ」
(略)
ハーバードの卒業式といえば、アメリカ最高のエリートのタマゴ相手なのだから、学長訓辞では、さぞかし「生涯を通して知的緊張感を持続せよ」とか「noblesse oblige(恵まれたものの義務)を忘れず、国家、社会に尽くせ」といった、格調高いスピーチが聞けるものと予想していた。ところがルーデソスタイソ学長は「Be anything but dull. (退屈な人間にだけはなるなよ)」という訓示をしたのである。Try very hard not to be dull. Whatever you do with yourself, do your best to be interesting and to make your life interesting. (dullな人間にならぬよう、努力しなさい。将来どんな仕事につこうと、興味ある人物となるよう、また自分の人生を面白いものにするよう、全力を尽くしなさい)そして学生の反応が、爆笑と大拍手なのにびっくりし、また「なるほどな」と思った。退屈な人間は人の上に立てない社会なのだ。

生き生きした人柄が歴史を動かす/「車座社会」の「右へならえ症候群」/「感性」を大事にする教育を
「インテリ」は「知識人」でなく「知性人」
意見の不一致に慣れること
P.47

欧米の「イソテリ」とつきあっていて「ワレ及バズ」と感ずるのは、知識の量ではない。地理も歴史も、日本の「知識人」の知識は、決して彼らに劣るものではない。早い話、われわれが英語の単語を何千と知っているのに対し、向こうの日本語の語彙はせいぜい「ゼソガクレソ」「ガイアッ」「ツナミ」どまりだ。
 しかし、あらゆる問題に対してすみやかに自分自身の意見をまとめ、それを論理的、魅力的に発表する段になると、残念ながらわが方はいつも押されっぱなしになってしまう。これは明らかに、対決に勝って目立つより「無難」に生きよう、と考えがちな大和民族の気質に由来するものであろう。

「演歌メンタリティ」からの離脱を/「行動」の背後には「理屈」が/「教養」とは「臨機応変能力」/大事な「表情のおしゃれ」
P.54

コミュニケーショソでもう一つ大事なのは、しゃべるときの表情である。これも、気質と修練が影響[している。

「お人好し」対「したたか」
「和をもって貴しとしない」社会/なぜ「ピーナッツ」が人気があるか/テンシャオピンという必要があるか/「甘い国」の対外援助/スケープゴタブルな日本人
便利さと過剰サービス
なぜ道路に名前がないのか/少ない女性用トイレ/年末年始に閉じる駅の売店/騒音や醜いものに鈍感すぎる/税金の使われ方に住民の声を
「些事が大事」―されど
小道具の重要性
P.82

米ハーバ:ド大に一年近くいたとき、マサチューセッツ州知事のスピーチ振り付け師をつとめている女性と仲良くなった。一度彼女の私邸で私自身のスピーチを「診察」してもらったら、まず第一に「紺系統の洋服、赤っぽいトネクタイにしなさい。それが聴衆にいちばん安心感を与える」とのご託宣。
(略)
例えばロソドソで話をするときなど、イギリスのイソテリはたいてい知っている、しかし外国人が知ることはあるまい、と思われるようなそれほど有名(ヘヘ)でないシェークスピア(ヘへぬ)の言葉などを冒頭にさりげなく入れておくと、「なかなかやるではないか」と、聴衆のこちらを見る目が違ってくる。少なくとも当方の発音のまずさぐらいは大目に見てもらえる。

論旨より言葉尻で激高
P.84

アメリカの高校の、討論の訓練をのぞいたら、先生が「あなたの主張が reasonable, understandable, persuasive(理にかなった、分かりやすい、説得的なもの)であっても、相手に『You are right, But I don’t like to agree with you.』(あなたの言うことは正しいが、同意したくない)と言われたのでは、なにもならない。言葉づかいには十分気をつけなさい」と教えていた。
新聞社にいて社説を書いていたとき痛感したのは、人は論旨ではめったに興奮せず、言葉尻ではすぐ激高する、ということだった。

あいづちのうまい配偶者、仲間を
P.88

あるアメリカ人の家に遊びに行ったとき、母親が結婚前のお嬢さんに、「彼の目をみながら『Really?(ほんと?)』と軽く驚いてみせるのが夫婦円満のコッよ」と教えているのを見かけた。
(略)
私の契約している「秘書サービス」の女性・たちも、実務がしっかりしているだけでなく常に明るい声で電話に出るうえ、用件のあとにつけるさりげない言葉がたいへんうまい。

おしゃれは些事ではない/サジ、サジ、スプーン
人生はタイミング
語学も音楽も始める時期が大事/冷たい国を愛せるか/海外旅行は若いときほどよい/病気も政治もタイミング/料理は冷めないうちに
奉仕といじめと気働き
「助け合い遺伝子」不足/ブタペストのネオンサイン/病気見舞いのむずかしさ/土産と手紙もむずかしい/他人はいつも無神経
ほめることは伸ばすこと
「アバタ探し」より「エクボ探し」/「ほめ方」「叱り方」の工夫を/「さっすがだね」「君としたことが」/主審をおだてる名捕手/封建的な叙勲制度
自由社会としつけ
信用が高いハワイの日系人/家族愛が人間性形成のスタート/親が甘くなりすぎた/親の背中が見えない/エリートのミーイズム
幸齢化社会とゆずり葉/生涯を 青春にする 予定表
P.144

「幸せな高齢社会」をつくりだすのは、文明国の国家的、社会的な宿題であろう。「人間がその最後の十五年ないし二十年の間、もはや一個の廃品でしかないという事実は、われわれの文明の挫折をはっきりと示している」(ボーボワール)からだ。

長寿社会と「いさぎよさ」/We are older, but not wiser.
P.149

むしろ、「We are older, but not wiser.(年をとったけど賢くなったわけではない)」(ジョン・レノンの歌の一節)、あるいは「Experience blinds you.(経験が判断を狂わす)」(シェークスピア)ことの方が多いのを自覚すべきではないか。

長谷川一夫を知らぬ若い女性/真に「人にやさしい政治」を
ゆとりの中から個性が生まれる
「ゆとり」は「さぼり」ではない/心を亡ぼす忙しさ/ウィーン滞在「二日」対「一週間」/ふくらみのない「まじめ人間」
P.161

菅原真理子埼玉県副知事(前総理府男女共同参画室長)は「これからの日本人は“金持ちより”“文化持ち”に」と主張しているが、人生の前半で、「受験戦士」「企業戦士」としてゆとりのない生活をしてしまうと、あとがたいへん。やっと〃日本代表"になれても、教養の幅も奥行きもないから、国際社会に出ていった場合、押されっぱなしになってしまう。私自身、湿地帯に高層ビルを建てるのは不可能、ということを、身をもって痛切に感じてきた。

「人間は不完全」という前提で/もっと「同好会型」ヒーローを/国際戦闘力のある「個性的人材」を
英語上達の近道と王道
発音のむずかしさ/読み書きもむずかしい/外国語学習に大事な“スジ”のよさ/「ペラペラ英語」より内容の勝負へ/語学はコミュニケーションの技術/日本的「完璧主義」はマイナス/「キッシンジャー英語」でよい
「幸せ」をもたらす気質
苦労を笑顔で話す気質/自分と折り合う難しさ/会社は不満の館/かんしゃく玉はG促進剤/幸せは地位や肩書きではない/貧しくとも楽しかった/大事な家族、仲間/悲しい「ホールインワン
【関連読書日誌】
【読んだきっかけ】
手元にあるのは,平成8年の三刷り.
【一緒に手に取る本】

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鳩山から鳩山へ 歴史に学び、未来を診る

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