“ある場所から,1マイル南に歩き,次に1マイル東に,さらに1マイル北に歩いたところ,最初の地点に戻ったという.この人は地球上のどこにいるのだろうか” 『偏愛的数学 II 魅惑の図形』 アルフレッド・S.ポザマンティエ, イングマール・レーマン 訳:坂井公 岩波書店

偏愛的数学 II 魅惑の図形

偏愛的数学 II 魅惑の図形

偏愛的数学の第二巻.幾何学の驚異,数学の金塊:不思議だが本当だ!の2章からなる.よく知られたあたりまえのような例もあれば,びっくりするような例もある.

勝手な四角形をとり,隣り合う各辺の中点を次々と線分で結んでみると,いつでも平行四辺形ができる.これは,ヴァリグノン平行四辺形と呼ばれている.(略)さらに,ヴァリグノン平行四辺形は,面積が元の四角形の半分であり,周長が元の四角形の2本の対角線の長さの和に等しい.

円に外接するどんな六角形においても,3つの対角線は同じ点で交わる.

ある場所から,1マイル南に歩き,次に1マイル東に,さらに1マイル北に歩いたところ,最初の地点に戻ったという.この人は地球上のどこにいるのだろうか.

これは昔,昔,小学生か中学生のころに知った有名な問いである.こたえはずばり「北極星」!と本書にもある.大昔,なあるほどと,感激した記憶がある.しかし,本書のこの回答は間違いのはず.
 この回答は間違っている,と気がついたのは,高校で地理の授業を受けた時.地球上のある地点から真東に進むとは,等緯度線上に進むことではなく,その点(接平面上)において南北と垂直の方向,すなわち,地球の中心を中心とする大円上を進むことを意味する.つまり,東京から真東にすすむと,到着するのはアメリカではなく,チリである.
 本書でも紹介されている,モンティホール問題を,有名な天災数学者エルディッシュが間違えていたというエピソードがあるが,同様に,本書の著者も,この問題を間違えていないだろうか?
【関連読書日誌】
[http://d.hatena.ne.jp/ctenophore/20111120/1321809999:title=“数学の娯楽的側面を探検することで,科学的な探究や発見の全体の中で数学が演ずる重要な役割から生じる楽しい副産物が収穫できるのだ” 『偏愛的数学 I 驚異の数 』
“オイラーの水晶のように透明なラテン語は、西洋の学者たちがこの言語で書くのをやめたときに西洋文明が失ったものに気づかせてくれる” 『素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~』 John Derbyshire, 松浦俊輔訳 日経BP社
“もし読者が本書を読み始めたときよりもそれ以上の疑問を抱いて読み終えたならば,私は大変光栄である.” 『バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ? 』 レーナード・M・ワプナー 佐藤宏樹, 佐藤かおり訳 青土社
【読んだきっかけ】
書評にて.『驚異の数秘術』著者のマーチンガードナーは,日経サイエンス(Scientific American)に数学パズルを連載していた.本書の訳者,坂井公氏は,現在日経サイエンスの類似の記事を連載中.
【一緒に手に取る本】

偏愛的数学 I 驚異の数

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素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~

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バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ?

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文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)

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