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“東日本大震災の膨大な出来事の中から、1時間、24時間、1週間、1ヶ月、6ヶ月というおよその単位で基本的な流れを再構成してみる。その中で発生した情報空白状況を検証する。私たちに、この情報空白を乗り切る方法はあったのだろうか。” 『震災と情報――あのとき何が伝わったか  (岩波新書) 』 徳田雄洋 岩波書店

震災と情報――あのとき何が伝わったか (岩波新書)

震災と情報――あのとき何が伝わったか (岩波新書)

大震災のあと,どのような情報が,どのようなに流れ,どのように活用されたのか,あの混乱の中で正確に把握することは簡単ではない.本書は,その根拠とともに事実関係を時間の流れとともに,冷静に記載したもの.さまざまな人がさまざまな活動をし,さまざまなことが起こっていたことがよくわかる.これから,まだ新たに明らかになってくる事実もあるであろうが,現時点で,実際に起こったことを把握する上で,よい資料であろう.
 はじめに

災害への対応の鍵は情報である。
(中略)
 今回の大震災では二種類の「情報空白」が発生している。一つは、地震津波で被災した東北・関東地方で、通信システムの破壊、停電、高負荷、接続規制などにより、人々が相互連絡や警報受信を行うことが難しくなった情報空白である。もう一つはこれとは性質が異なり、大手メディアが一種類の公式発表のみを大量に伝えることによって生じる情報空白である。

 本書の目標は小さなものである。東日本大震災の膨大な出来事の中から、1時間、24時間、1週間、1ヶ月、6ヶ月というおよその単位で基本的な流れを再構成してみる。その中で発生した情報空白状況を検証する。私たちに、この情報空白を乗り切る方法はあったのだろうか。将来、地震津波や大事故が起こって情報空白が生じた場合に、私たちはどのようにしてそれを乗り切ればよいのだろうか。

  • 放射性物質の拡散の様子をシミュレーションしているグループが三つあった.日本のSPEED-I,オーストラリア気象地球力学中央研究所,ドイツ気象庁.3月13日にSPEED-Iデータを受け取った福島県は住民へ公表しないことを決めた.オーストラリアの研究所は3月12日から,ドイツ気象庁は3月15日から計算結果を公開しており,インターネット上で閲覧できた.

 序章 震災前 国内デジタル社会

  • Ustreamはもともとイラクに派兵されたアメリカ兵が本国の家族と連絡をとるための方法と開発され2007年に開始.

 第1章 最初の1時間 どこへ向かうべきか

  • NHKの災害放送をみていた広島の中学生が,テレビやラジオに接することができない人のために,Ustreamのサイトを利用して自宅からNHKのライブ中継をはじめた.
  • 14:46地震発生,14:52非常用復水器自動起動,15:03非常用復水器手動停止
  • 3月11日午後3時には,既に放射性キセノンが大気中に放出されていたとする,オーストリア,ノルゥエー研究機関の報告あり
  • 6月ネブラスカ州の洪水,8月バージニア州の地震でそれぞれ原発に危機あり.ワシントンは,ノースアンナ原発より128キロ,ニューヨークは,インディアンポイント原発から61キロ

 第2章 最初の24時間 連絡がとれない中で

 雑誌対談者の発言(2010年)
 「地震の時に日本で一番安全な場所は
 原子力発電所の中です」

  • 福島第一原発では全電源が失われ,構内PHS,外線電話とも,バッテリー切れ,基地局機能停止とともに不通に
  • 停電を免れた免震棟と東京電力本店との社内電話は,自前の通信網故に維持された

 第3章 最初の1週間 非難すべきかどうか

  • UCサンタバーバラでは,3月16日に物理学者,Benjamin Monreal氏による講演「日本の原子炉溶融はどの程度ひどいのか」.講演スライド「福島原発放射能を理解する」は,野尻美保子氏のグループが日本語訳してネットで公開(URL)
  • 原子力安全工学の研究を10年前にやめたと言う機械工学者
  • 再処理工場の事故に言及している点.英セラフィールド,仏ラ・アーグ再処理工場の環境汚染

 第4章 最初の一ヶ月 どんな説明がなされたか

 テレビ解説者のパラドックス
 「この種類の放射性物質は重いので原子力発電所から遠くへは飛びません。
 日本に今あるのは昔の海外核実験で飛んできたものです。」

  • 4/16 NHKチェリノブイリ後,子供の甲状腺異常以外に住民の病気は発生しなかったとの報道.これは,IAEAの報告書と同じ.一方,1996年「チェリノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染」,2006年「汚された大地で―チェリノブイリ20年後の真実」なる特集番組をNHKは放映している

 第5章 最初の六ヶ月 だんだんわかってきたこと

 低レベル放射線は、従来は確率的ふるまいで、人にがんなどを発生させると説明されてきた。以下は、情報科学的な説明である。

  • 土壌汚染の特徴.(1)距離に応じて減っていくのではなく,飛び飛びに高濃度の場所が斑上に存在する.(2)一部分を拡大した地図もまた斑上特徴をもつ
  • コルシカ島では,チェリノブイリ事故後,甲状腺癌が激増
  • 2011年6月,インターネットのアクセスは基本的人権の一つであるという考えが,国連で生まれている

 おわりに

  • 1944/12/7昭和東南海地震.戸籍謄本なども失われた大災害.戦時下の情報統制下.

本書は以下で締めくくられている.巻末に情報ソースとなる参考資料リスト

 原子力関係者の列挙した教訓にもう一つ付け加えたい教訓がある。日本では原子力発電は終わらせよう。地震の多い日本では、リスクが巨大すぎて商業的発電方式として合理的コストに見合わないからである。

【関連読書日誌】

  • (URL)現在生じている事態は、単なる技術的な欠陥や組織的な不備に起因し、それゆえそのレベルの手直しで解決可能な瑕疵によるものと見るべきではない” 『福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房
  • (URL)今回の大災害は、これまで通用してきたほとんどの言説を無力化させた。それだけではない。そうした言葉を弄して世の中を煽ったり誑かしたりしてきた連中の本性を暴露させた。” 『津波原発』 佐野眞一 講談社

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

情報処理2011年09月号

情報処理2011年09月号

学会誌であるが,「《特集》 東日本大震災 危機発生時の対応について考える」である.編集したのは本書の著者である,徳田雄洋氏.