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“見える「現実」は人によって違う。” 『原発現実路線の知恵袋』 大庭靖明(編集部) AERA,2012.2.6

仙石「指南役」の銀行マン『原発現実路線の知恵袋』と題するAERAの記事.原発推進論原発廃止論もそれぞれの正しさを主張する言説はあるものの,具体的にどのような時間計画で,どのように方向を転換していくのか,そのとき発生する問題は何かなどについて,冷静で現実的な解説は必ずしも多くない.そのような中で見かけたのが,本AERAの記事.仮に原発廃止に歩みを進める場合,東芝などが進めようとしている原発輸出をどう考えればよいのか,その点にも触れているという点で,注目した.(この点に関する議論,報道はこれまでにも既にあるのかもしれないが)

菅政権時代,急傾斜した「脱原発」路線が足踏みをしている。
背後には「現実」と知らしめるブレーンがいる。

一介の銀行員が民主党政権のエネルギー政策に深くかかわっている。国際協力銀行の国際経営企画部長の前田匡史(54)である。米国の民主、共和両党の有力者や産油国の王族、さらにはロシアやカザフスタンにまで特異な人脈を有する不思議な男だ。

国際協力銀行は,株式会社日本政策金融公庫の部門名であり,法人格はないのだそうだ.
前田匡史氏の主張を記事から再録.

「(3・11)以前のよ、つにいっぱい輸出しようなんて言いません。国内でこれから減らそうというのを何で海外に出すんだという議論もあると思います。しかし、日本がどうあれ、海外では原発を造る動きは広がる。特に中国。インドもそう。中国はものすごい勢いで造ろうとしており、それを止める手段はない。中国で事故が起きたら近隣国の日本は影響を受けます。日本だけ造らないから安全なんて鎖国的な発想は、ありえないんです。ですから事故を経験して安全性を高める日本の技術を外国に採用してもらうのは、なんら不思議なことではありません」
そのうえで、こう語る。
脱原発と叫ぶのは簡単ですよ。しかし国内54基の原発は運転を止めても燃料棒があり、使用済み燃料が残る。これを安全に取り出して、どこに中間貯蔵し、どう最終処理していくのか。いま突然原発をやめたら技術者もいなくなります。これから原発を造りたい中国やインドに頭脳流出するかもしれない。ですから原発産業の国際競争力を維持しつつ、段階的に原発依存度を下げていくしかないと思うのです。脱原発は簡単じゃないんです」

見える「現実」は人によって違う。1月24日の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の議論もそうだつた。脱原発の論者が「安全規制を丸投げし、事故が起きるとほとんど当事主義力がない」という「現実」を突きつければ、容認派は「再生可能エネルギーや省エネに取り組んでも一定程度原子力は必要。12年には再稼働が問題になる」と、別の「現実」を語った。

【関連読書日誌】

  • (URL)“現在生じている事態は、単なる技術的な欠陥や組織的な不備に起因し、それゆえそのレベルの手直しで解決可能な瑕疵によるものと見るべきではない” 『福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】