“詩は今いるところであなたの心に作用する。知性に働きかけ、感情によりそい、あなたは独りではないとそっと伝えてくれる。” 『イェイツの詩と引用の原理』 詩のなぐさめ1 池澤夏樹 図書 2012年4月号 岩波書店
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小説は,読者を別世界へ連れて行き,ちょっとした冒険をさせて,やがて日常に戻す.これはちょっとずるい,という.映画やゲームは言うまでもない
それに対して、詩は今いるところであなたの心に作用する。知性に働きかけ、感情によりそい、あなたは独りではないとそっと伝えてくれる。だから詩を読むことを習慣にするのは生きてゆく上で有利なことである。
第一回,引用されている詩は,W・シンボルスカ,イェイツ,言及されているのは,島崎藤村「初恋」など.
そこにあるのはたぶん引用という原理だ。己の境遇を嘆く時に、遠い時代の、遠い土地の誰かの思いを自分の上に重ね、これは誰の身にも起こることだと知る。そのための遠隔通信装置として詩というものがある。遠隔救命装置かもしれない。
引用は軽い。本当に一つの思想を理解し、すっかり自分のものにして、それを中心に据えて自分のものの考えかたや生きかたを構築することではない。大岡信の一篇はレヴィ・ストロースの構造主義に匹敵するものではない。それでも『春 少女に』の詩の一つを知っていると、ちょうど壁に一枚のクレーを飾るように、なぐさめられるのだ。
イェイツの『選択』を引用し,
この詩は、自戒のために手で書き写して壁に貼っておこうかと思うほど迫る。
という,最後に,イェイツの文章を引いている
「われわれは他人と口論してレトリックをつくり、自分と口論して詩をつくる。」
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