“ともすると社会性を欠くと思われがちな若沖のキヤラクターですが、還暦を前に錦市場の存亡をかけて懸命に立ち働いたことなどが近年の研究で判明しています” 『伊藤若沖×素麺』 林綾野のべべたくなるモナリザ AERA 2012年8月27日

AERA巻末の連載,『林綾野の 食べたくなるモナリザ』に最近気がついたのだが,これがたいへん美しい.「美術(絵)」と「料理」の取り合わせは,珍しくはないかもしれない.それらを結びつけるソースともいうべき,添えられた文章がなかなかいい.さらに,絵と料理の写真が美しい.その他に,料理のレシピと画家の略歴が,付け合わせとして添えられていて,1ページの紙面が料理を盛るお皿のようにデコレートされている.
書き手の林綾野さんは,フリーのキュレーターとある.フリーのキュレーターと称していくには,それなりの才覚と戦略が必要だろう.photo 写真部・外山俊樹,構成:長瀬千雅とある.恐らくこのお二人の貢献も大きいに違いなく,名前を覚えておこう.
 最近の題材は,下記.

29回(2012.7.30) 
     マティス×ホテル・レジナでの朝食
    『カフェオレボウルを満たした弧独と自由』
30回(2012.8.6)
     歌川国芳×白玉
    『ひんやり粋な江戸の夏をつるり』
31回(2012.8.13-20)
     ミケランジェロ×マノレツォリーニ・チーズとエジプト豆のマリネ
    『「故郷の昧」の美昧しさをかみしめて』
32回(2012.8.28)
     伊藤若沖×素麺
    『好物の素麺がオタクの「熱」を和らげた』
33回(2012.9.3)
     古代エジプト×オクラ入りビーフシチュー
    『来世でも食べたくなる古代の昧』
34回(2012.9.10)
     コクトー×舌ビラメのパピヨット
    『描き出す線も言葉も、そして料理も美しく』

32回の文章より.

ともすると社会性を欠くと思われがちな若沖のキヤラクターですが、還暦を前に錦市場の存亡をかけて懸命に立ち働いたことなどが近年の研究で判明しています。しっかりと世の中を見つめるシビアな眼差しも兼ね備えていたのかもしれません。暑い夏、好物の素麺をすする若沖の心は、絵画の夢と浮き世の聞を往き来していたのでしょうか。

素麺のレシピ
Recipe

4人分/素麺6束(300g)、海老4匹、錦糸卵A[卵3個、砂糖小さじ2、塩少々]、椎茸含め煮B[椎茸4個、水300cc塩小さじ1、みりん小さじ2]、木の芽、出汁各適量
(1)素麺を茄で、冷水にさらし水をきる。
(2)海老を茄で、殻を剥く。
(3)錦糸卵を作る。Aの材料を混ぜ、薄く焼いて刻む。
(4)椎茸含め煮を作る。椎茸の石突きを除き、鏑にBを入れて15分煮た後、そのまま浸しておく。
(5)器に素麺を入れ、(2,3,4)を盛り合わせ、出汁をかけ木の芽を添える。

この夏,九州国立博物館で 特別展『美のワンダーランド 十五人の京絵師』(URL)で,若冲曾我蕭白を見たばかり.なかなか見応えのある展覧会でした.九国の建物にもびっくりしたけれど.
【関連読書日誌】

  • (URL)地位を築いた研究者たちは、徐々に「目に見えない大学」つまり非公式のコミュニケーション・ネットワークをヨーロッパ中に立ち上げていった” ダニエル・H.A.C.ローキン, フェルメールからのラブレター展カタログ,2011

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

美のワンダーランド 十五人の京絵師

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