私の読書2012年のベスト10冊(その2)

みすず書房の雑誌「みすず」の読書アンケート特集にならって
2012年私にとっての10冊は以下です.順不同です.(1冊おまけ)
もう6月になってしまいましたが.

  1. 『梅里雪山(メイリーシュエシャン)十七人の友を探して (ヤマケイ文庫)』 小林尚礼 山と渓谷社
  2. 『火花―北条民雄の生涯 (ノンフィクション・シリーズ“人間”) 』  高山文彦 七つ森書館
  3. 若冲 ――広がり続ける宇宙 Kadokawa Art Selection (角川文庫) 』 狩野博幸 角川書店
  4. 『娘の眼から―マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンの私的メモワール』 メアリー・キャサリンベイトソン, 佐藤良明, 保坂嘉恵美訳 国文社
  5. 『日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声』 鶴見俊輔, 関川夏央 筑摩書房
  6. 『全身がん政治家』 与謝野馨, 青木直美 文藝春秋
  7. 『聞き書 野中広務回顧録』 御厨貴, 牧原出 岩波書店
  8. 飼い喰い――三匹の豚とわたし』 内澤旬子 岩波書店
  9. 『オオカミの護符』 小倉美惠子 新潮社
  10. コンニャク屋漂流記』 星野博美 文藝春秋
  11. 『運命を生きる――闘病が開けた人生の扉 (岩波ブックレット) 』 浅野史郎 岩波書店

後半の6冊について
(6),(7),(11)

聞き書 野中広務回顧録

聞き書 野中広務回顧録

全身がん政治家

全身がん政治家

政治家もの3冊.“ヤクザは利口でできない,馬鹿でも出来ない,中途半端でなお出来ない”(URL)という表現があったけれど,政治家も同じかも知れない.本当に国と国民のことと考えて発言・行動しているのか?仮に考えているとして,その考えは正しいのか,幅広い知識と教養と,深い思慮に裏打ちされているのか?仮に裏打ちされているとして,そうしたいという強い熱意をもっているのか?仮に熱意を持っているとしても,選挙に落ちればただの人である.いずれにせよその選択は選挙人である国民に負託されている.
政治家ものは,毀誉褒貶,誇大宣伝などいろいろあるから,何が事実なのか見極めるのは難しい.この3冊は信ずるに足るものとして読んだ.決して自由民主党びいきというわけではない.以下の関連読書日誌で引いた,岸恵子の文章(『30年の物語』)だって,岸は中曽根氏とは主義主張は異なるけれど,と断っている.ひとそれぞれいろいろな側面があるものだ.その人を動かしている「核」の部分が素敵な人たち.
【関連読書日誌】

  • (URL)日本の国民にはわからないけれど、北朝鮮、韓国、中園、ロシアとは本当に仲良くしておかなければ、将来日本の国は危ない” 『聞き書 野中広務回顧録』 御厨貴, 牧原出 岩波書店
  • (URL)私は官邸で会議を重ね、ついに「財政構造改革法」という法律を作りました。梶山・与謝野のコンピで成し遂げた仕事のなかで、これは傑作中の傑作です” 『全身がん政治家』 与謝野馨, 青木直美 文藝春秋
  • (URL)“運命とは、人生の中での出会いのことである。出会った人との関係は一生続き、出会ったものごとの影響は、死ぬまで残る” 『運命を生きる――闘病が開けた人生の扉 (岩波ブックレット) 』 浅野史郎 岩波書店
  • (URL)あのときの中曽根元首相のスピーチはほんとうに素敵だった” 『30年の物語  (講談社文庫) 』 岸恵子 講談社
  • (URL)そこに自分で作った料理の写真が載っているのだが、黒木瞳が子どもに作ったお弁当の写真とは違うのである” 『官能の人・伊吹文明 京都の四季の食卓』 お代は見てのお帰りに 連載223回 小倉千加子 週刊朝日 2012年9月7日
  • (URL)“チェイニー長官と私は四年近くも一緒に仕事をしていながら,純然たる懇親の時間は一時間たりとももてなかった” 『策謀家チェイニー 副大統領が創った「ブッシュのアメリカ」』  バートン・ゲルマン  (朝日選書)

(8)(9)(10)

飼い喰い――三匹の豚とわたし

飼い喰い――三匹の豚とわたし

オオカミの護符

オオカミの護符

コンニャク屋漂流記

コンニャク屋漂流記

こちらは,敢えて言うなら民俗学もの.著者はたまたま女性ばかり.僕らの日常生活は,一見きれいなものだけに囲まれつつあるように思われるが,身近なところに,土着的なるものがたくさん潜んでいて.日々の生活を支えている.そんなことを改めて教えてくれる3冊でした.
【関連読書日誌】

  • (URL)なぜ私は自ら豚を飼い、屠畜し、食べるに至ったか” 『飼い喰い――三匹の豚とわたし』 内澤旬子 岩波書店
  • (URL)ほんの少し掘り返すだけで、土地は意外なほどに様々な問いを投げかけてくる” 『オオカミの護符』 小倉美惠子 新潮社
  • (URL)思っている限り、人は生き続ける。 忘れること、忘れられることを恐れながら、それでも生きていこう” 『コンニャク屋漂流記』 星野博美 文藝春秋
  • (URL)以前は人が獣類を圧倒していたのに、いまや人が獣類に負け始めている” 『女猟師』 田中康弘 エイ出版社