“『鯰絵』をレヴィ=ストロ ―スの『仮面の道』と重ね合わせたこの解説を目にして一番喜んだのは山ロ昌男だろう” 『鯰絵ー民俗的想像力の世界』 文庫本を狙え 761 坪内祐三 週刊文春 2013年 7/4号
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『鯰絵ー民俗的想像力の世界』C・アウエハント著,小松和彦・中沢新一・飯島吉晴・古家信平訳,岩波文庫1440円+税
『ユリイカ』六月号「特集=山ロ昌男」に言及している
『ユリイカ』六月号「特集=山ロ昌男」は玉石混交だが、高山宏と中沢新一との対談「軽業としての学問」はやはり文句なしに面白かった。
そして時々、読書の手を休め、様々なことを考えさせられた。
二人はまず山ロ昌男との出会いを語る。
私は,四方田犬彦の文章が抜群に面白かった
その『鯰絵』が岩波文庫に収められ、出会って三十五年目にしてこの本を手にした。
まず中沢新一の解説「プレート上の神話的思考」から読み始めた。素晴らしい。
このように書き始められる。
〈「鯰絵」を見てまず心を打たれるのは、そこに表現されている江戸庶民の知性の高さである。大震災を体験した現代人として、私はその
ことにことに深い感銘をおぼえる〉
安政ニ(一八五五)年、江戸で大地震が起きる。その直後、「ユ―モアと風刺に富んだ多色摺りの鯰絵が大量に出回った」。
三十五年前にこの本に出会つても普通の学術書として読んだだろう。しかし……。
〈その鯰絵を前にして、そこに表現されている知性のたくましさ、洒脱さ、高さに、驚かされる。そして同じ大震災を経験した現代日本人との知性における大きな落差に、気づかされることになる〉
その具体を中沢新一は説いて行く。
最初に触れた対談で中沢氏は、「翻訳ができ上つたときも山ロ昌男はそれを知っていたのに、なんの反応もしなかつた」、と述べているが、『鯰絵』をレヴィ=ストロ ―スの『仮面の道』(訳者の一人が山ロ昌男)と重ね合わせたこの解説を目にして一番喜んだのは山ロ昌男だろう。
【関連読書日誌】
- (URL)“それは「クロード・レヴィ・ストロース」という名の、おおきな知性の森を歩くようなもので、そこではルネサンス絵画の秘密も神経科学の知見も、小路に咲く花のひとつのように、そっと差し出されてくるのであった” 『レヴィ=ストロースの庭』 港千尋 NTT出版
【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】
- 作者: C.アウエハント,小松和彦,中沢新一,飯島吉晴,古家信平
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/06/15
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ユリイカ 2013年6月号 特集=山口昌男 道化・王権・敗者
- 作者: 高山宏,中沢新一,上野千鶴子
- 出版社/メーカー: 青土社
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