“そして当日のすべての演奏が終了し、大西さんがこれで現役生活に別れを告げ、新しい人生のフェイズに足を踏み入れようとしたまさにそのときに、この「おれは反対だ!」事件、が持ち上がったわけだ” 『「厚木からの長い道のり」 小澤征爾が大西順子と共演した『ラプソディー・イン・ブルー』』 村上春樹 考える人 2013年 11月号 新潮社

考える人 2013年 11月号 [雑誌]

考える人 2013年 11月号 [雑誌]

9月6日小澤征爾が振るサイトウキネンオーケストラとジャズピアニストの大西順子が共演した.小澤征爾の復帰公演でもある.それに到る感動的な物語.
 厚木に小さなジャズクラブがあった!
 大西順子の最終演奏がそこで行われた
 その場に,村上春樹が連れてきた,小澤征爾がいた.

 彼が厚木の狭いすし詰めのジャズ・クラブで、現役引退を表明する大西さんに一人立ち上がって異議を唱え、渋る彼女を執芯に説得し、まるで外堀を埋めるように(表現はあまり良くないですが)俵女のためにいろんな条件を整え、松本で『ラプソディー』を演奏することに同意させたのだ。

 そして当日のすべての演奏が終了し、大西さんがこれで現役生活に別れを告げ、新しい人生のフェイズに足を踏み入れようとしたまさにそのときに、この「おれは反対だ!」事件、が持ち上がったわけだ。青天の露震というか、僕も、びっくりしたけれど、大西さんもかなりびっくりしたはずだ。会場にいた人々もみんな息を呑んだ。厚木のジャズ・クラブに小海さんが現れたというだけでも驚きなのに、みんなの前で急に立ち上がって、大西さんに引退宣言を撤回するように迫ったわけだから。

もう一つの驚きは,冒頭に書かれた,カズオ・イシグロをめぐるエピソード.村上春樹がカズオイシグロに贈った大西順子のCD.そこには,大西のNever Let Me Go.カズオイシグロの小説が出版されたのはその後のこと.
【関連読書日誌】

  • (URL)“古い病気に新しい治療法が見つかる.すばらしい.でも,無慈悲で,残酷な世界でもある.”  『わたしを離さないで  (ハヤカワepi文庫) 』 カズオ・イシグロ  土屋政雄 訳 早川書房

【読んだきっかけ】新潮社の広報誌「波」の編集後記
【一緒に手に取る本】

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