“秘密というのは秘密のままにしておくのが難しい。秘密は心の被膜ぎりぎりのところに身を潜めていて、それを抱える人の決意にひび割れを見つけるや、そこからいきなり這い出してくるのだ” 『秘密』 (上・下) ケイト・モートン 訳:青木純子 東京創元社

秘密 上

秘密 上

秘密 下

秘密 下

The Secret Keeper

The Secret Keeper

なんとも不思議な、あまりにも上手い構成の本である。一応推理小説だから、殺人事件は起こる。だが、その犯人は目撃証人の独白により最初から明らかなのだ。なんのまよう余地はない。読者は、3つの時代を行ったり来たりしながら、秘密を探る。だが、なんだこんなつまらない普通の結末だったのか、と思いそうになったところで、その秘密は、最後の最後の方で明かされる。この小説が、推理小説ではなく、とてつもなくすごい純愛小説であったことに気がつくのである。涙無しには読み終えることができない、推理小説である。推理小説だから、秘密を知ってしまった読者は、もう一度最初からこの物語を読み返したくなる衝動にかられる。

秘密というのは秘密のままにしておくのが難しい。秘密は心の被膜ぎりぎりのところに身を潜めていて、それを抱える人の決意にひび割れを見つけるや、そこからいきなり這い出してくるのだ。

本書の内容とは関係ないが、本書で「あなたはサバイバー(survivor)なのだから」というセリフが何カ所もでてくる。このサバイバーに翻訳者は「頑張り屋さん」という訳を当てていた。なるほどと思った次第。
NHKの朝ドラ、あまちゃんで、「暦の上ではディセンバー」という挿入歌がある。この歌詞に、「暦の上ではディセンバー でもハートはサバイバー」というところがあり、ハートはサバイバーとはどういうことだと思っていたのだが、これでわかった気になった次第。
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