“一つの台詞が、時間を遡り美しい過去の記憶の中に入ったり、不思議な感覚になることがあります。そこが清水さんの戯曲の面白さかもしれません” 『火のようにさみしい姉がいて』 2014.10 シス・カンパニー公演 パンフレット

清水邦夫全仕事 1958~1980

清水邦夫全仕事 1958~1980

1978年作の清水邦夫の戯曲「火のようにさみしい姉がいて」を蜷川幸雄が演出.大竹しのぶ宮沢りえ段田安則が演じる.
蜷川幸雄が,

清水邦夫が自分の集団「木冬社」に書いた作品にはいつも苛立ちがありました。その演出をすることになろうとは

という作品が本作.清水邦夫の生い立ち,故郷,家族,田舎と都会,男と女の人生,いろいろなものが複雑に交錯する幻想的な戯曲.主人公が役者であり,オセローの台詞(小田島雄志訳)がいろんなところででてくる.小田島訳のオセローを愛読した身としては懐かしさも感ずる.
大竹しのぶ談(取材,文 市川安紀)

立って相手と会話を交わすと台本を読むだけではわからなかったことが見えてきます。
弟に対する愛情は勿論、小さな村ならではの身内同士の異常なほどの結びつきの深さ、そこに生まれるドロドロとした感情、故郷を捨て都会に出た者に対する憎しみや悲しみ。幼い頃の美しい思い出や愛しくて大切なものなど、色々な事が見えてきます。観る方の想像に委ねる部分があると蜷川さんもおっしゃっていましたが、「もしかしたら姉はこの世にいないのかもしれない」と思うときもあって、あやふやな世界を行ったり来たりしています。まだ稽古中で現実と幻想の世界との境目がつかみ切れていなくて難しいです。

一ヵ月のお稽古の中で、少しずつ作品の世界や人物が身体に染み込んでゆくのが、たまらなく好きです。染み込んだ上で本番になる。幕が上がり「清水邦夫の世界へようこそ」、そんな感じになればいいのですが、難しいです。ギリシャ悲劇やシェイクスピアにように、心情をそのまま台詞で表現する方がずっと簡単な気がします。

一つの台詞が、時間を遡り美しい過去の記憶の中に入ったり、不思議な感覚になることがあります。そこが清水さんの戯曲の面白さかもしれません。うーん、でも本当に難しい。

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