“人間の日常性の特徴の一つとして「おしゃべり」を重要視した哲学者がいましたが、私たちも大切な「ことば」と、なお一層大切な「沈黙」について考えてみたいと思います” 『 うつわの歌』 【新版】 神谷美恵子 みすず書房

うつわの歌【新版】

うつわの歌【新版】

神谷美恵子(1914-1979)さん作による詩,および訳詩を集めたもの。
帯より

 生誕100年 新編集愛蔵版
 この世の いのちだけが 存在では ないのですから
 
 最晩年の心境を歌った「絶望の門」「残る日々」ほか、未発表詩篇を含む単行本初収録作多数。感謝と祈りに満ちた大切な言葉をこの一冊に。

訳詩は、クリスティナ・ロゼッティとハリール・ジブラーンの詩から。

クリスティーナ・ジョージナ・ロセッティ(Christina Georgina Rossetti, 1830年12月5日 - 1894年12月29日)は、イギリスの詩人。画家・詩人ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹。兄をはじめとするラファエル前派の画家たちの作品のモデルにもなった。クリスティーナ・ロセッティ, http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3&oldid=49237502 (last visited Sept. 14, 2014).

ハリール・ジブラーン
生誕 1883年1月6日死没 1931年4月10日(満48歳没)
国籍 オスマン帝国  宗教 マロン典礼カトリック教会
ハリール・ジブラーン(Khalil Gibran、1883年1月6日 - 1931年4月10日)はレバノン出身の詩人、画家、彫刻家。英語読みからカリール・ジブランとも呼ばれる。キリスト教マロン派(マロン典礼カトリック教会)信徒。
オスマン帝国時代末期に現在のレバノン北部ブシャッレ(ブシャッリ)で生まれ、少年期の1895年アメリカ合衆国へ移住、ニューヨーク市で没した。「20世紀のウィリアム・ブレイク」とも称され、宗教・哲学に根ざした、壮大な宇宙的ヴィジョンを謳う詩や絵画を残し、その作風は後世いろいろな詩人や政治家に影響を与えた。世界的に著名な詩集は、1923年英語で発表された『The Prophet(預言者)』(最初の構想はアラビア語で練ったといわれる)。また、その続編ともいえる1933年の英語詩集『The Garden of the Prophet(預言者の庭)』の一節は、英国のジャーナリスト、ロバート・フィスクが現代レバノン政治について描いたノンフィクション "Pity the Nation"の題名ともなっている。
 また、皇太子妃だった当時の皇后美智子がレバノン大統領から贈られたジブラーンの詩集『預言者』を愛読し、相談役の神谷美恵子にも紹介。神谷が後に『預言者』の抜粋集を執筆するきっかけにもなった。さらに、『預言者』はカウンター・カルチャーなどにも影響を与え、ジョン・レノンビートルズの曲 ”ジュリア ”(1968年)の歌詞に引用したりしている。 故郷ブシャッレ郊外に、彼を記念する博物館がある。
ハリール・ジブラーン, http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%B3&oldid=51919141 (last visited Sept. 14, 2014).

さて、「絶望の門」は、草稿のまま残されていた未発表の詩で、遺族のご了解により、初収録とのこと。草稿のカラー写真も掲載されている。若き日の実らなかった恋を謳ったもの。

 かつてうら若き日に私は兄を通して
 うつつならぬ愛を与えられたが
 ことば一つ、文一つ交わすこと許されず
 会うことも一切できなかった

 たぐい稀なる才と感性のその人は 
 あっという間に病に倒れ
 四年もの間、その若き命を
 次々とむしばまれて行った
(中略)
 
 「とうとうだめでした」
 ある朝、兄と私は駅で父上に会い
 彼の目から涙がはふり落ちるのをみた。
 その日、私の天地は崩壊した。
(中略)

 あたたく迎えられし父上と母上は
 私を有髪の尼として迎えたい
 息子にゆずるものを私にゆずり
 その家の姓を名のれと云いたもうた。
(中略)(ずっととんで最終連)

 そうして何十年
 やめる人の床の側に立ち
 ささやかな医療をすることが
 私の一生となった。

 仕事が烈しすぎて
 私もまた今病んでいる
 しかし、私の心は晴れている
 なすべきことを少しでもできた恩寵を思う。

ハリール・ジブラーンの訳詩には、神谷美恵子自身によるコメントが付いている。「おしゃべり」という詩にはこんなかんじ。
P.128

 私たちの生活の多くが「おしゃべり」に費やされていることを思って、この詩は省略せずに訳しました。人間の日常性の特徴の一つとして「おしゃべり」を重要視した哲学者がいましたが、私たちも大切な「ことば」と、なお一層大切な「沈黙」について考えてみたいと思います。

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