“「夢は叶う、思い強ければ」----今井さんが会見で語った言葉です” こぼればなし 図書 2015年 07月号 岩波書店

図書 2015年 07月号 [雑誌]

図書 2015年 07月号 [雑誌]

4月30日に今井雅之さんという役者が亡くなった。お顔は知っていたが、俳優としての活動ぶりはよく知らなかった。当時の報道によれば、コメディアンがタイムスリップして特攻隊員になるという自作自演の舞台“The WInds of God” をライフワークにしていたと言う。自衛官機甲科(戦車隊)から俳優になったという経歴、百田尚樹氏の『永遠のゼロ』がしばらく前に話題になったこともあり、どんな思想の持ち主かなとは思っていた。微妙に抑制のかかった報道も気にはなっていた。ところが、今月号図書の編集後記に相当する「こぼればなし」を読んで、そこに大きな物語があったことを知った。
 1961年生まれ。自衛官を経て俳優に転身。その破天荒の青春期『若い僕らにできること』(岩波ジュニア新書)は、出版後15年を経ても読まれていること。今井さんが降板した舞台“The WInds of God” は、1988年初演、91年文化庁主催芸術祭賞において原作、脚本、演技の3賞を受賞。これは史上初。93年、国際連合作家協会主催芸術賞受賞。

◉ 1988年、今井さんは、ニューヨークはブロードウェイの外れの外れ、オフ・オフ・ブロードウェイの小劇場で同作品を上演します。まったくの後ろ盾のない、無謀ともいえる自主公演でした。なんのコネもない、無名の日本人たちによる“カミカゼ”を主人公にした舞台は、困難を極めます。その苦労の顛末は『“カミカゼ”公演記 in NY』(岩波書店)に詳しいですが、彼の烈々たる情熱は、かつての敵国で奇蹟を起こします。
◉ 「最後の台詞まで笑いが絶えない今井のこの芝居は、理想主義に燃える特攻隊員一人ひとりの、青春への期待と不安をめぐる真剣な葛藤を実感させる」「“The Winds of God”は、力に溢れた勇敢な芝居であり、過去を理解し先達を公正に裁けるという、安易に抱きがちな私たちの思い込みを、実に見事に打ち砕いてしまう」−−日本人でさえ注目しなかった小さな劇場での公演を、ニューヨーク・タイムズが大きな写真入りで絶賛する劇評を書いたのでした。
◉ 「夢は叶う、思い強ければ」−−今井さんが会見で語った言葉です。

【関連読書日誌】

  • (URL)“男にも女にもいろんな生き方があり、いろんな幸せがあるのだということが、この国の常識になるのはいったいいつの日だろう” 『如月小春は広場だった―六〇人が語る如月小春 』 『如月小春は広場だった』編集委員会(西堂行人+外岡尚美+渡辺弘+楫屋一之) 新宿書房
  • (URL)この地上の世界って,あんまりすばらしすぎて,だれからも理解してもらえないのね  『ソーントン・ワイルダー わが町 (ハヤカワ演劇文庫) 』 ソーントン・ワイルダー 鳴海四郎訳

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

ウィンズ・オブ・ゴッド [DVD]

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THE WINDS OF GOD―零のかなたへ (角川文庫)

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"カミカゼ"公演記in NY―The winds of god