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“鶴見さんは、このひとが同時代に生きていてくれたよかった、と心から思えるひとのひとりだった” 『どこにも拠らずに考えぬいた  鶴見俊輔さんを悼む 寄稿』 上野千鶴子 朝日新聞 2015年7月24日 

鶴見俊輔さんが亡くなった。享年92歳。いずれはこういう時がおとずれるとは思っていたが、大切な人をひとり失った。日本のアカデミアとは全くちがうところにその思想の源流を持つ、という点で、余人をもって代え難い人であった。上野千鶴子さんは、高校生の頃から「思想の科学」の読者で、「鶴見さんは遠くにあって自ずと光を発する導きの星」であり、大学に入学して“上洛”すると同志社大の研究室を訪ねて行ったという。

 「思想の科学」はもはやなく、鶴見さんはもうこの世にいない。いまどきの高校生はかわいそうだ。鶴見さんは、このひとが同時代に生きていてくれたよかった、と心から思えるひとのひとりだった。

 鶴見俊輔。リベラルということばはこの人のためにある、と思える。どんな主義主張にも拠らず、とことん自分のアタマと自分のコトバで考えぬいた。
 何事かおきるたびに、鶴見さんならこんなとき、どんなふうにふるまうだろう、と考えずにはいられない人だった。哲学からマンガまで平易なことばで論じた。座談の名手だった。

 このひとの手によって育てられた人材は数知れない。独学の映画評論家佐藤忠男、「みすずの学校」の高橋幸子、『女と刀』の中村きい子、作家・編集者の黒川創、批評家の加藤典洋…。わたしもそのひとりだった。その幸運がうれしい。

 「思想の科学」の誇りは「50年間、ただのひとりも除名者を出さなかったことだ」と。社会正義のためのありとあらゆる運動がわずかな差異を言い立てて互いを排除していくことに、身を以て警鐘を鳴らした。

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