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“自分の目で見る。 自分の耳で聞く。 自分の頭で考える−。 言葉にすると、当たり前のことのように思えるかもしれないが、他に方法はない。 これこそが現代に必須な「レーダー」なのだ。氾濫する情報に対して“防波堤”を持たすに巻き込まれるのではなく、自らの判断で「何が本当で、何が嘘なのか」を判断することが重要なのだ” 『騙されてたまるか 調査報道の裏側』  (新潮新書) 清水潔   新潮社

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

 成田で買って、機上で一気に読む。清水潔さんの初めての新書だとのこと。桶川ストーカ事件、足利冤罪事件での活躍は本で読んで知っていたが、その他にもこれだけのことに関わっていたとは。第12章 命すら奪った発表報道 − 太平洋戦争 は涙無しには読めません。NNNドキュメント 2005年12月4日(日)放映の『婚約者からの遺書  60年…時を越えた恋』の取材記である。
はじめに

 何が本当で、何が嘘なのか−。それを見極めることはとても難しい。人間関係においても常に人を疑ってばかりいては消耗してしまう。しかし、疑うことをやめてしまえば、どんな災難に巻き込まれるかわからない。そんな時代になってしまったようである。
 私は後悔などしたくない。
 得体の知れない情報を鵜呑みにして騙されたり、深層が闇に葬られるのを黙って見ていることなど、まっぴらごめんである。
 “報道人”としての私の原点はそこにある。

よく聞かれることがある。
「なぜあのような報道ができるのですか」
答えはとてもシンプルだ。
おかしいものは、おかしいから−。
それだけである。
たとえそれが警察から発せられた情報や裁判所の判決、マスコミの報道だろうと。
何より私は伝聞が嫌いなのだ。
自分の目で見て、耳で聞き、頭で考える。
ほとんどそれだけを信条にこれまでやってきた。
必然と最終的な責任は私自身に帰する。失敗しても人のせいいはできない。「間違っているのは、自分の方ではないか……」といった不安が常につきまとう。リスクを少しでも減らすには、さらに調べ、裏を取り、取材を重ねるしかない。
 私にとっての「調査報道」とはそういうものだ。

 自分の目で見る。
 自分の耳で聞く。
 自分の頭で考える−。
 言葉にすると、当たり前のことのように思えるかもしれないが、他に方法はない。
 これこそが現代に必須な「レーダー」なのだ。氾濫する情報に対して“防波堤”を持たすに巻き込まれるのではなく、自らの判断で「何が本当で、何が嘘なのか」を判断することが重要なのだ。

目次から

第1章 騙されてたまるか − 強殺犯ブラジル追跡
第2章 歪められた真実 − 桶川ストーカー殺人事件
第3章 調査報道というスタイル
第4章 おかしいものは、おかしい − 冤罪・足利事件
第5章 調査報道はなぜ必要か
第6章 現場は思考を超越する − 函館ハイジャック事件
第7章 「小さな声」を聞け − 群馬パソコンデータ消失事件
第8章 “裏取り”が生命線 − “三億円事件犯”取材
第9章 謎を解く − 北朝鮮拉致事件
第10章 誰がために時効は成立するのか − 野に放たれる殺人犯
第11章 直当たり −北海道図書館殺人事件
第12章 命すら奪った発表報道 − 太平洋戦争
おわりに

第5章のの中から
P.138 それは本当に「スクープ」なのか

私はスクープというものを大きき分けると二種類あると思っている。
 1 いずれは明らかになるものを、他より早く報じるもの
 2 報じなければ、世に出ない可能性が高いもの
(中略)
 ジャーナリストの牧野洋氏によれば、誰が早く報じたのか、という経緯は読者や視聴者には関係ない。アメリカのジャーナリズム界では、速さは評価されず、それは「エゴスクープ」と呼ばれているという。
(中略)
「自分の頭で考える」という基本を失い、「○○によれば……」という担保が無ければ記事にできない記者たち。それは結果的に、自力で取材する力を衰退させ、記者の“足腰”を弱らせていくことになる。

【関連読書日誌】

  • (URL)“物は何も語りはしない。  しかし雄弁にもできる。  真実を語らすことも、嘘に利用することも。” 『桶川ストーカー殺人事件―遺言』  (新潮文庫) 清水潔 新潮社
  • (URL)“「一番小さな声を聞け」というルールに従うなら、この場合、被害者遺族がそれだ。手紙を書き、末尾に自分の携帯の番号を書き入れてポストに入れた。私は手紙ばかり書いている” 『殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』 清水潔 新潮社
  • (URL)“私たちは当たり前のように享受しているこの「戦後」を、二度と「戦前」に引き戻してはならない” 『日本の戦争 BC級戦犯 60年目の遺書』 田原総一朗監修 田中日淳編 堀川惠子聞き手 アスコム

【読んだきっかけ】成田空港の書店にて
【一緒に手に取る本】

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件 (新潮文庫)

殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件 (新潮文庫)

凶悪―ある死刑囚の告発―

凶悪―ある死刑囚の告発―

NNNドキュメント  2005年12月4日(日)/55分枠 

婚約者からの遺書  60年…時を越えた恋
鹿児島読売テレビ日本テレビ放送
鹿児島・知覧で写真の前に立つ伊達さん 「智恵子 会いたい 話したい 無性に…」これは陸軍のある特攻隊員が、出撃の日に愛する女性に書き残した最期の手紙…婚約者からの遺書だ。その手紙を大切にし、ひっそりと生きてきた女性がいる。女性の名は、伊達智恵子さん82歳。結婚式直前の出撃命令、九州まで必死に追う彼女、悲しいすれ違い、永遠の別れ…。今、若い人たちの中で話題になっている芝居「飛行機雲」のモデルにもなった。60年目の夏、婚約者・穴沢利夫さんの最期の地を探し求め、智恵子さんは沖縄に向かう…。
ナレーター:小山茉美