“スーツに身を固めた連中は、理解しようとも認めようともしないが...............。  俗に言う“メキシコの麻薬問題”は、メキシコの問題ではなくアメリカの問題なのだ。  買い手なくして売り手なし。” 『ザ・カルテル (上)』 (角川文庫) ドン・ウィンズロウ 峯村利哉訳 角川書店

『犬の力』を読み終えたところで、最新刊の続編を一気に読む。(読んだのは半年くらい前)
カバーにあるあらすじから

麻薬王ダンバレーラが脱獄した。30年にわたる血と暴力の果てにもぎとつた静寂も束の間、身を潜めるDEA捜査官アー卜・ケラーの首には法外な賞金が賭けられた。玉座に返り咲いた麻薬王は、血なまぐさい抗争を続けるカルテルをまとめあげるベく動きはじめる。一方、アメリ力もバレーラを徹底撲滅すべく精鋭部隊を送り込み、壮絶な闘いの幕が上がる――数奇な運命に導かれた2人の宿命の対決、再び。『犬の力』、待望の続篇。

これは実話だとみてよい。メキシコ全体の地図が付与されていて、前作より読者に親切。
まず、なによりも衝撃的なのは、本文始まる前に書かれている献辞。3ページに渡り、131人の名前が書き連ねられており、本書は、彼らに捧げられている。そして、最後にこうある。

彼らは本書の物語が展開する時代に、メキシコで殺されたり“消え”たりしたジャーナリストの一部である。

P.46

 スーツに身を固めた連中は、理解しようとも認めようともしないが...............。
 俗に言う“メキシコの麻薬問題”は、メキシコの問題ではなくアメリカの問題なのだ。
 買い手なくして売り手なし。
 メキシコ国内に解決策は存在しない。未来永功。

【関連読書日誌】

  • URL)“早期平和実現プログラム、またの名をフェニックス作戦。へたな冗談だ。多くの人間が早ばやと平和な永い眠りへと導かれた” 『犬の力 上』  (角川文庫)  ドン・ウィンズロウ 東江一紀訳 角川書店
  • URL)“われわれは、南米のこの国で、ニ十億ドル近い金をかけて罌粟畑と子どもたちに毒を撒きながら、自国では、麻薬の毒から逃れたい人間を助けるだけの資金も持たないのだ”  『犬の力 下』 (角川文庫) ドン・ウィンズロウ 東江一紀訳 角川書店

【読んだきっかけ】週刊文春書評『ザ・カルテル
【一緒に手に取る本】