2013-01-01から1年間の記事一覧

“かつて、追い返されて帰って行ったときのエリーゼの笑顔、絶望のふちで『舞姫』をしたためた鷗外の背中。これは、ふたりの生涯の姿でもあった” 『それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影』 六草いちか 講談社

それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影作者: 六草いちか出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/09/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る六草いちか氏による前著『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』の続篇である.前著において,鴎…

“富の再配分ではなく、負担の再配分(痛みの分かち合い)をこそ語らねばならない「収縮時代」に送り届けられた、一冊の希望の書である” 『〈習慣〉から未来への展望探る』 (『民主主義のつくり方』 宇野重規著の書評) 鷲田清一

朝日新聞2013年12月8日 朝刊 読書欄 『民主主義のつくり方』 宇野重規著に対する,鷲田清一氏による書評である. こんな柔らかい言葉で現代政治について論じる人は、日本の政治学者のなかではめずらしいのではないか。 現代は、社会を基礎づける「確実性の指…

“意外かもしれないが,地図製作に携わる人々は,四色問題を全然重視していない” 『四色問題 (新潮文庫) 』 Robin Wilson 著  茂木健一郎 訳 新潮社

四色問題 (新潮文庫)作者: ロビンウィルソン,Robin Wilson,茂木健一郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/11/28メディア: 文庫この商品を含むブログ (9件) を見るFour Colors Suffice: How the Map Problem Was Solved: Revised Color Edition (Princeton …

“微小ながら自分も例外でない歴史としての人間とその来し方行く末を考える時、「無名戦士」をいとおしんだ尾崎一雄の目と耳は、「有名戦士」よりも「無名戦士」の圧倒的に多い現象の事実に即して公平であり、その公平さは作品鑑賞の基本でもある” 『山川登美子』 竹西寛子 講談社

山川登美子 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)作者: 竹西寛子出版社/メーカー: 講談社発売日: 1992/07メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る山川登美子―「明星」の歌人作者: 竹西寛子出版社/メーカー: 講談社発売日: 1985/11メ…

“古戦場のようなコールセンターで働くうちに、いつの間にか自分の体にはたくさんの言葉の刃が突き刺さっていた。でも、その一本を抜くと、それは自分を傷つける凶器ではなく剣になった” 『督促OL 修行日記』 榎本まみ 文藝春秋

督促OL 修行日記作者: 榎本まみ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/09メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 83回この商品を含むブログ (38件) を見るごく普通の成績の冴えない大学生が,就職氷河期に信販会社に採用先を決めたものの,配属先がコールセン…

“そして当日のすべての演奏が終了し、大西さんがこれで現役生活に別れを告げ、新しい人生のフェイズに足を踏み入れようとしたまさにそのときに、この「おれは反対だ!」事件、が持ち上がったわけだ” 『「厚木からの長い道のり」 小澤征爾が大西順子と共演した『ラプソディー・イン・ブルー』』 村上春樹 考える人 2013年 11月号 新潮社

考える人 2013年 11月号 [雑誌]作者: 考える人出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/10/04メディア: 雑誌この商品を含むブログ (4件) を見る9月6日小澤征爾が振るサイトウキネンオーケストラとジャズピアニストの大西順子が共演した.小澤征爾の復帰公演でも…

“日本の“ふだんのおかず”は、 実は名前のつかないような もんばかり” 『土井善晴さんちの 名もないおかずの手帖』 土井善晴  講談社

土井善晴さんちの 名もないおかずの手帖 (講談社のお料理BOOK)作者: 土井善晴出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/03/09メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 12回この商品を含むブログ (3件) を見る料理研究家は数多いるけれど,料理本は山のように…

“ある一線を越えると事態が一変 するという、その見えない臨界を視る中井の「臨床眼」は、精神医療の現場だけでなく、それを潜り抜けて時代精神にまで向かう” 『精神への「圧力」、減圧の工夫』 (中井久夫著『「昭和」を送る』の書評) 鷲田清一 2013/08/04 朝日新聞

片付けものをしていて,鷲田清一氏が書いた書評が目に付いた.中井久夫著『「昭和」を送る』に対する書評である.中井久夫のエッセーの数々は,私にとっても大切な文章の一つ一つである.その書を鷲田清一氏が書評するのである.短い文章であるが,読みごた…

“現象は一元的ではない。多元的で複層的だ。複雑に絡み合っているからこそ、僅かな歯車の食い違いが大きな過ちへと転化して、なし崩し的に事態が進行する” 『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』 森達也 ダイヤモンド社

「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい―――正義という共同幻想がもたらす本当の危機作者: 森達也出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2013/08/23メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (11件) を見る―――正…

“日本の精神医学を代表する功績を残したのは、精神分析学の土居健郎(たけお)さんと、個人と個人の「あいだ」の概念で日本人を分析した精神病理学の木村さんだと思います” 『(人生の贈りもの)精神科医・中井久夫』 朝日新聞 2013.9.10-10.4

朝日新聞夕刊 Be欄の連載,人生の贈り物,2013.9.10-10.4は,中井久夫氏へのインタビューだった. 79歳になる中井氏の人生の軌跡を尋ねる短いインタビューだが,論文の要旨にようにうまくまとまっていて,読みごたえ有り. 5回の連載タイトルは, 1 時代…

“料理は人生を変える力をもつ技術です” 『 行正り香の はじめよう! ひとりごはん生活』 行正り香 朝日新聞出版

行正り香の はじめよう! ひとりごはん生活作者: 行正り香出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る週刊朝日の連載が本になった.料理研究家と称される人は,世の中にはたくさんいて,料理本も山の…

“しかし、この星(地球)の美しさに誘われ、宇宙人がやつてくることが頷ける思いがした。  どうやって、この星が誕生したかということより、この星に自分が生を受けたことにひどく感激した旅であつた” 『ねむりねこ (講談社文庫) 』 伊集院静 講談社

ねむりねこ (講談社文庫)作者: 伊集院静出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/09/12メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見るへんな巡りあわせ,偶然というのはあるものだ.テレビドラマ「いねむり先生」に誘われて,地元の図書館分館にあった,伊集…

“せっかく古本屋に足を運んだのだから、 見て、触って、読んで、嗅いで、 これまで自分が知らずにいた本に一つでも多く出会いたい” 『僕らは、古本屋好き。』 BRUTUS (ブルータス) 2013年 6/15号 マガジンハウス

BRUTUS (ブルータス) 2013年 6/15号 [雑誌]出版社/メーカー: マガジンハウス発売日: 2013/06/01メディア: 雑誌この商品を含むブログ (16件) を見る全国の心が躍る古本屋125点を紹介!! 今欲しい古本ガイド付き. わざわざ本屋に行って、本を見たり、触ったり…

“今までの古い意識が新しい考え方へと変わつているような、あるいは何か行動を起こす意欲が湧いているような、そんなインスピレーションの種を一粒蒔いておく” 『 TEDトーク 世界最高のプレゼン術』 ジェレミー・ドノバン 中西真雄美訳 新潮社

TEDトーク 世界最高のプレゼン術作者: ジェレミー・ドノバン,中西真雄美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/07/18メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (17件) を見るHow to Deliver a Ted Talk: Secrets of the World's Most Inspiring Presenta…

”森繁さんが鮮明に憶えているのは、その人との間に残った〈悔い〉の思いなのである。他にもエピソードはいろいろあったろうに、まず思い出すのは〈悔い〉なのだ。あの時こうしてやればよかつた、どうしてあんなことを言つてしまつたのだろう、いま会えるものなら会って詫びたい――そればかりだった” 『私があなたに惚れたのは』 久世光彦 主婦の友社

私があなたに惚れたのは作者: 久世光彦出版社/メーカー: 主婦の友社発売日: 2002/04/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (2件) を見るNHKクローズアップ現代で,2013年9月4日に,「33年目の向田邦子 なぜ惹(ひ)かれるのか」が…

“別の言葉でいえば、研究の質感といつてもよい。これは直感とかひらめきといったものとはまったく別の感覚である” 『生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)』 福岡伸一 講談社

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)作者: 福岡伸一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/05/18メディア: 新書購入: 56人 クリック: 1,487回この商品を含むブログ (1110件) を見る6年前に出たベストセラーをやっと読む.後半やや冗長な感じがして,同じ…

“芸人というものは......、人知れず消えていくものです。芸人というものはそういうものです。皆が皆、生きてるうちに咲くわけではありませんから、散り方を会得するんでしよう。粋というもんより、むしろ気障を連中は好むんです” 『いねむり先生』 伊集院静 集英社

いねむり先生 (集英社文庫)作者: 伊集院静出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/08/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (11件) を見るいねむり先生作者: 伊集院静出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/04/05メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含…

“それでもなお、自分の体験をまとめてみようと思ったのは、癌治療そのものだけではなく、今現在の自分が癌治療以前の自分と比べて異常に元気になってしまった経緯もすべて書いてほしいと言われたから、その一点に尽きる” 『 身体のいいなり 』 内澤旬子 朝日新聞出版

身体のいいなり (朝日文庫)作者: 内澤旬子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/08/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見る希有なる書『飼い喰い――三匹の豚とわたし』を読んで深く感銘を受けて以来,気になっていた一書.癌闘病記(厳密に…

“人間は、誰かとつながっていたいもの」「あなたが求めれば、やさしく手を差し伸べてくれる人が必ずいる” 『いねむり先生 (集英社文庫) 』 伊集院静 集英社

いねむり先生 (集英社文庫)作者: 伊集院静出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/08/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (11件) を見る半沢直樹の裏でやったテレビ朝日『いねむり先生』があまりに素晴らしかったので.原作は未読. 役者,配役はもちろん,…

“どんなささいなことがらについてでも、それを愛し、そのことについて調べたり、試したりしている一群の人々が必ずいる。そのような人々は通常、地球上の各地に散在してそれぞれ日々の暮らしを送ってはいるのだが” 『世界は分けてもわからない (講談社現代新書) 』 福岡伸一 講談社

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)作者: 福岡伸一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/07/17メディア: 新書購入: 27人 クリック: 225回この商品を含むブログ (155件) を見るすっかりベストセラー作家になってしまった福岡伸一氏であるが,『プリオ…

“被爆者の話は日本のメディアによって単純化され,感傷的な体験にされてきたように私は思うのです” 『ヒロシマナガサキ』 スティーヴン・オカザキ監督作品 2007年アメリカ のパンフレット

ヒロシマナガサキ [DVD]出版社/メーカー: マクザム発売日: 2008/03/28メディア: DVD購入: 7人 クリック: 54回この商品を含むブログ (31件) を見る現代人の多くにとって,ヒロシマ・ナガサキとの距離は驚くほど遠い.知ったつもりでいるけれど,その内実を正…

“歴史的資料の役割から少し離れて、現実の私と共有している空間の中に在るものを集中的にみつめる。すると...何10万人という単位ではない、たった1人の姿がみえてくる” 『ひろしま 石内都・遺されたものたち Things Left Behind』  リンダ・ホーグランド監督

ひろしま作者: 石内都出版社/メーカー: 集英社発売日: 2008/04メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 62回この商品を含むブログ (37件) を見る上記は,『ひろしま』石内都著 集英社の本.手元にあるのは,それではなく,2013年夏,岩波ホールで上映された映画…

“黒柳さんは、天衣無縫な天然ボケが魅力だったことは確かだが、その根底が「真摯に生きる女性」であることを見逃してはならないと思っている” 『ザ・ベストテン (新潮文庫)』 山田修爾 新潮社

ザ・ベストテン (新潮文庫)作者: 山田修爾出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/12/24メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (12件) を見る2013年8月28日,TBS元プロデューサの山田修爾さんが亡くなった.一テレビマンの訃報にしては,…

“この勇気を与えたのは、家に戻つた父が読めと示唆した、鴎外の史伝『渋江抽斎』ではないか。読了後、抽斎の妻五百(いお)も須賀には「灯台のような存在」となつた” 『須賀敦子の方へ』 第一部最終回「海の彼方へ」 松山巌 考える人 2013年 春号 新潮社

考える人 2013年 05月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/04/04メディア: 雑誌この商品を含むブログ (15件) を見る松山巖による連載『須賀敦子の方へ』が第一部最終回を迎えた.いずれ書籍になるらしい. 最終回は「海の彼方へ」である. 須賀敦…

“それにしても呟きのひとつ、囁きのような物言いさえ、自分と世界との関係を決める行為であると気づくまでに一体どれほどの歳月を要したことか” 『 言葉を恃む』 竹西寛子 岩波書店

言葉を恃む作者: 竹西寛子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/02/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る竹西寛子氏の講演をまとめた珠玉の一冊! 言葉によって生きることこそ、自分を知る手立てであり、 自分の在り方を決めることである―…

“それも全部、自分たちが飲み込みながら次にバトンを渡さなければいけない。そのときに“ノー”と言う姿勢で何かを渡せるかというと、何も渡せないんです” 『有次と包丁』 第10回 江弘毅 波 2013年 09月号 新潮社

波 2013年 09月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/08/27メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る新潮社の「波」で,10回に渡る連載が終了.2012年12月号の連載開始から引き込まれるように読みはじめ,なかなかの読みごたえがあった.こ…

“芭蕉の俳諧は侘びを重んじたが、人間そのものを「侘びさせる」としたら、究極のところは乞食である” 『 やさしい古典案内 (角川選書) 』 佐々木和歌子 角川学芸出版 (4/4)

やさしい古典案内 (角川選書)作者: 佐々木和歌子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版発売日: 2012/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る句のものとに集う人々 − みんなで楽しく「座」の文芸 中世の異空間から − 連歌 詩の磁場をさが…

“背負うには重すぎる人生を生きる人々が、今様には現れる。どんなメロディで、どんな声で、どんな思いで、人々は歌ったのだろう” 『 やさしい古典案内 (角川選書) 』 佐々木和歌子 角川学芸出版 (3/4)

やさしい古典案内 (角川選書)作者: 佐々木和歌子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版発売日: 2012/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る市井の人々の声が聞こえる − 王朝時代と武者の世のはざまから 「説話」が生まれるとき − 『今昔…

“信仰、もしくは出家が、この時代の女性の「自由」の限界点だった。紫式部は、そこで筆を置くのである” 『 やさしい古典案内 (角川選書) 』 佐々木和歌子 角川学芸出版 (2)

やさしい古典案内 (角川選書)作者: 佐々木和歌子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版発売日: 2012/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見るこの思いは三十一文字じゃ収まらない − 散文への目覚め どうしても「かな」で書きたかった船旅…

“古典文学の歴史をたたどることは、言葉と文字を連ねてきた日本人たちの物語。研究者ではない私は古典の腑分けはできないけれど、そっと横に添い寝して、古典の思いに耳を傾けることはできるかもしれない” 『 やさしい古典案内 (角川選書) 』 佐々木和歌子 角川学芸出版 (1)

やさしい古典案内 (角川選書)作者: 佐々木和歌子出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版発売日: 2012/10/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見るあの竹西寛子氏が「良書を得た。日本の古典文学について。」とまで言うのである. これは名著.…