バナッハとポーランド数学 R.カウージャ シュプリンガー・フェアラーク東京

- 作者: R.カウージャ,志賀浩二
- 出版社/メーカー: シュプリンガー・フェアラーク東京
- 発売日: 2005/12/28
- メディア: 単行本
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本書は,200ページばかりの小著ながら,バナッハが生きた20世紀前半のポーランドの知的風景を活写した好著である.バナッハは,バナッハ空間(私たちが生活する実空間をユークリッド空間とするばならば,それを数学的に少し抽象化したのがユークリッド空間,ユークリッド空間さらに数学的に抽象化したのがバナッハ空間)や関数解析(基礎的な数学の一分野であるが,制御工学などでも使われる)でよく知られるが,当時のポーランドは,数学基礎論のメッカであった.
なにより印象深いのは,数学者の梁山泊と化した町の雰囲気であろう.バナッハが生活したポーランドの古都ルヴフ(現ウクライナのリヴィフ,SF作家スタニスワフ・レムの出身地でもある)には,スコティッシュ・カフェと呼ばれるカフェがあり,数学者が集まって議論が繰り広げられていたと言う.ここでの議論に使われたカフェのノートは,スコティッシュ・ブックとして出版され,有名になった.学問の愉しみを彷彿とさせるような都市空間である.但し,ポーランドの多くの都市と同様に,第二次世界大戦では,厳しい生活を強いられることになる.
【読んだきっかけ】集合論,関数解析などの基礎を勉強している時に,もっとも役立ったのが,数学30講シリーズ,大人のための数学,など本書の訳者である志賀浩二氏による入門書である.『無限からの光芒―ポーランド学派の数学者たち』は名著と呼ばれるだけのことはある.すると必然的に,バナッハ空間や,奇妙きてれつなバナッハ・タルスキの定理に行き当たる.
【一緒に手に取る本】

- 作者: 志賀浩二
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 1988/04
- メディア: 単行本
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- 作者: レーナード・M・ワプナー,佐藤宏樹,佐藤かおり
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2009/11/25
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新版 バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 砂田利一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/12/09
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