みすず 2011年1・2月合併号 みすず書房

みすず 2011年 02月号 [雑誌]

みすず 2011年 02月号 [雑誌]

「みすず」は単行本ではなく,みすず書房が出している月刊誌であり,岩波書店の「岩波」,新潮社の「波」,講談社の「本」のようなPR誌である.ただし,他のPR誌は,1000円程度の年間購読料で郵送してもらえるのに,同程度の厚さである「みすず」は年3780円もする.にもかかわらず,みすずの購読を続けている理由の一つは,この読書アンケート特集にある.もちろん,毎号の連載もすばらしい.

この読書アンケート特集は,毎年,1・2月合併号に組まれているもので,依頼を受けた人は,前年に読んだ書物から興味を感じたものを5点以内を取り上げ,それぞれに短文を付したいる.「前年に読んだ書物」であるから,新刊とは限らないし,洋書も躊躇なく入っている.今年は,142人からの回答が掲載され,B5版3段組で100ページあるから,新書1冊以上のボリュームがある.過去10年以上にわたって読み続けてきたこの特集号がどれほど多くの個人的な発見をしてきたことか.毎年,年が明けると,この特集号が届くのが待ち遠しいのである.142人の評者のうち,名前を知っているのは高々33人.だから,わたしにとって,本の発見だけでなく,新しい評者の発見の場でもある.

さて,今年の特集号から,さっそく読みたくなった本,買いたくなった本を掲げておこう.沢山あるのでほんの一部だけ.さて,いったいいつ読み切れるのか...

アンケート中9名の人から言及されるというのは極めて異例のこと.これは,著者が昨年末に惜しまれつつ病没していることにも一因があるだろうが,本書は,これまでの新聞書評等でも高い評価を得ている.ちなみに,アンケートで本書を取り上げた9名は下記の方々である.名和小太郎(情報システム論),原武史(思想史),鎌田慧(ルポライター),長谷正人(映像文化論),松尾尊禱(日本近現代史),石原千秋(日本近代文学),巽孝之アメリカ文学),丘沢静也(ドイツ文学),最小葉月(ノンフィクション・ライター).黒岩比佐子氏の著作は,評判は見聞きしたことがあるのだが,未読であった.これを期に遅ればせながらまとめて読んでみたい.

パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

  • 『進化論の時代――ウォーレス=ダーウィン往復書簡』新妻昭夫:

著者は昨年逝去.本アンケートの(答える側の)常連であった.進化論は,思想史的革命であったはずだが,その変遷をビビッドに伝えてくれるものがなかなかない.高価なのでちょっと躊躇.

進化論の時代――ウォーレス=ダーウィン往復書簡

進化論の時代――ウォーレス=ダーウィン往復書簡

  • 『リハビリの夜 (シリーズケアをひらく)』熊谷晋一郎:
  • 『その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち』上岡陽江, 大嶋栄子:

医療,ケア関連のもの2冊.臨床現場の医師からの評価が高い.恐らく必読の書.

リハビリの夜 (シリーズ ケアをひらく)

リハビリの夜 (シリーズ ケアをひらく)

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

  • 代替医療のトリック』サイモンシン, エツァートエルンスト:

シンは,科学啓蒙書の著述者として高い実績有り.

代替医療のトリック

代替医療のトリック

  • 『偶然とは何か――その積極的意味 (岩波新書)』竹内啓:

現代統計学の泰斗が書いたとなれば,読まずにはいられない.

偶然とは何か――その積極的意味 (岩波新書)

偶然とは何か――その積極的意味 (岩波新書)

科学史関連の気になる本.

ヒルベルト――現代数学の巨峰 (岩波現代文庫)

ヒルベルト――現代数学の巨峰 (岩波現代文庫)

量子の海、ディラックの深淵――天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯

量子の海、ディラックの深淵――天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯

  • 戸坂潤と私―常とはなる愛と形見と』 光成秀子:

1977年刊の本.原武史氏による紹介.著者は,大団地における全国初の女性自治会長とか.

戸坂潤と私―常とはなる愛と形見と (1977年)

戸坂潤と私―常とはなる愛と形見と (1977年)

  • 『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』堀川惠子:

NHKのドキュメンタリーを観た.そのプロデューサによる著書.

死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの

死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの

今更紹介するまでもないが.

黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志

黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志

これは良い本にちがいない.今からわくわくする.

夢の抜け口

夢の抜け口

一週間

一週間

  • ユダヤ教の歴史 (宗教の世界史)』市川裕:

本物の学者による書.

ユダヤ教の歴史 (宗教の世界史)

ユダヤ教の歴史 (宗教の世界史)

  • 『ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか』シュロモーサンド, 高橋武智(監訳):

ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか

ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか

これまでの伊藤博文像を覆す良書とか.

伊藤博文―知の政治家 (中公新書)

伊藤博文―知の政治家 (中公新書)

  • 沖縄に関する本が多数,本当にたくさん紹介されている.どれも読んでおく価値のある書物に思える.

『「近代沖縄」の知識人―島袋全発の軌跡 (歴史文化ライブラリー)』屋嘉比収,
『要石:沖縄と憲法9条』C・ダグラス・ラミス
『ウシがゆく―植民地主義を探検し、私をさがす旅』知念ウシ,
『眠れぬ夜の精神科―医師と患者20の対話 (新潮新書)』中嶋聡
沖縄戦、米軍占領史を学びなおす―記憶をいかに継承するか』屋嘉比収,
『沖縄を聞く』新城郁夫,『地(つち)のなかの革命―沖縄戦後史における存在の解放』森宣雄,
『現代沖縄の文学と思想 (1981年) (タイムス選書〈12〉)』岡本恵徳(40年前の本),
『愛郷者伊波普猷―戦略としての日琉同祖論』石田正治,
『風景の裂け目 沖縄、占領の今』田仲康博

眠れぬ夜の精神科―医師と患者20の対話 (新潮新書)

眠れぬ夜の精神科―医師と患者20の対話 (新潮新書)

ウシがゆく―植民地主義を探検し、私をさがす旅

ウシがゆく―植民地主義を探検し、私をさがす旅

要石:沖縄と憲法9条

要石:沖縄と憲法9条

「近代沖縄」の知識人―島袋全発の軌跡 (歴史文化ライブラリー)

「近代沖縄」の知識人―島袋全発の軌跡 (歴史文化ライブラリー)

沖縄戦、米軍占領史を学びなおす―記憶をいかに継承するか

沖縄戦、米軍占領史を学びなおす―記憶をいかに継承するか

沖縄を聞く

沖縄を聞く

地(つち)のなかの革命―沖縄戦後史における存在の解放

地(つち)のなかの革命―沖縄戦後史における存在の解放

愛郷者伊波普猷―戦略としての日琉同祖論

愛郷者伊波普猷―戦略としての日琉同祖論

風景の裂け目 沖縄、占領の今

風景の裂け目 沖縄、占領の今