『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) 』 藻谷浩介 角川書店

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

帯によれば,通算50万部という.経済もの,しかもベストセラー,となると,手に取るのを躊躇してしまう.大人が読める生きた経済学の本(ハウツー本でないもの)はなかなか少ないし,読み慣れていないとなかなか選別も難しい.

本書は,一読,二読の価値ありと思う.最近の新書にしてはやや厚いが,丁寧な説明の故であり,多くの人にちゃんと理解させるためには,これくらいの分量は必須」,ということになろう.

本書の魅力は,基本的なデータとその分析に基づいているという点と,著者自身が地方を歩いて地方の現場を観察しているという点の二つに尽きる.そこから得られる結論は,マスメディアが盛んに述べ立てるものとは大きく違う,という点が何より驚きである.

著者曰く,

今の日本では,「デフレ」だの「不景気」だの,学術用語のように見えますが実は意味の曖昧な,いいかげんな言葉で括られるばかり.何が原因で何が起きていのかという「事実」が,明快な言葉で分析されたり語られたりしていません(これは学者やマスコミなど,言葉で商売している人たちの怠慢だと思います).

今の,そしてここ十年以上の日本の経済状況は,日本の人口構造の変貌から必然的にもたらされた結果であって,景気がよくなっても変わらない,といい,処方箋も提示している.

われわれが,あたかもスローガンのように,聞き馴らされている,日本復興のシナリオがじつはとんでもない間違いであることを知らせてくれる.