“ヤクザは利口でできない,馬鹿でも出来ない,中途半端でなお出来ない” 『潜入ルポ ヤクザの修羅場  (文春新書)』 鈴木智彦 文藝春秋

潜入ルポ ヤクザの修羅場 (文春新書)

潜入ルポ ヤクザの修羅場 (文春新書)

時々週刊誌の記事にあるような,この世界の現状を紹介,解説したような本ではない.そうした解説は,仮に記載が正確で,分析が的確であっても,一時的なものであって,時事評論に留まる.一般読者にとっての興味はむしろ,より俯瞰的に観たこの世界の紹介であろう.入門と言っても良いかも知れない.

とは言え,閉ざされた,非合法の色彩が強い世界であるが故に,本当の姿を体系づけて書けるわけがない.本書の魅力は,暴力団専門ライターとしての取材経験から得られた具体的なエピソードが集められている点であろう.それぞれは断片的かも知れないが,それが限界ともいえる.

p.101
弁護士会がまとめた企業向け暴力団対策によれば

  1. 暴力団とは一人で会わない
  2. 要求には即答しない

だそうです.
p.104
ヤクザ専門誌の編集部員となった著者が,不在中に電話があり,ポストイットに残されていた伝言

用件=PM4時.○○組の××様より電話有り.内容=殺すぞ

p.141

ヤクザは利口でできない,馬鹿でもできない,中途半端でなお出来ない.

と,昔から言われるそうです.

一番読みごたえがあるのは,第4章「西成ディープウエスト」だろう.特に,盆中における手本引きのルポ,解説は圧巻.賭博でなく,ゲームとしても面白そうな気がするのだが.ギャンブルの醍醐味は,生活,時には,生死を賭けているところにあるのか...


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