“幸せだった思い出を語るのが,いちばんうれしいことではないか” 『いまも、君を想う』 川本三郎 新潮社

- 作者: 川本三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
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奥様はファッション評論家の川本恵子さん.料理好きの奥様は,グッチ裕三の料理番組のファンであったという.
なかでもよく作ってくれたのは、豚もやし。もやしの上に豚のベーコンを載せて蒸すだけの簡単な料理なのだが、これがおいしい。
(略)
「簡単なのにおいしいね」と私が言うと、家内は「本当は、この料理,簡単ではないのよ、どこだかわかる?」と聞く。
さて,答えは?
(中略)
「単純なことだけど料理のいちばんのこつは、手間をかける、手を抜かないこと」とも言った。
までいの力だ!
棺にいれたという奥様の著書『魅惑という名の衣裳』からの引用.
「本当の女性のファッションとは、社会の価値観に合わせるのではなく、男性の気を引くためにあるのでもない。それは、自分の精神や好みに忠実である時がもっとも美しい」。
病気になってから十分に一緒にいてあげられなかったことを悔やむ著者に,葬儀にきてくれたお坊さんが言った言葉.
「遺族の方はみなさんそうおっしゃるんです。でも奥さんといた長い時間のことを考えて下さい。つらくおもうこともあったでしょうが、それはあくま奥さんとの長い、いい時間に包まれているんです」
葬儀を終えて,
悲しんでいる余裕がなかった。もしかしたら葬儀という形式は、悲しみを冷却するためにあるものなのかもしれない。生き残ったものを、現実の方へ、こちら側のの方へ引き戻す−。
同じく妻を亡くした先輩映画評論家,飯島正さんの歌集のあとがきを引きつつ,
「(略)すなわち歌というものは、文章で書くことが出来ないことをテレもせず、心安らかに、表現できる形式だな、ということ」
短歌のもっている定型が、むき出しの感情を和らげてくれるのだと思う。個人的な思いが古来の形式を踏まえることによって普遍へと昇華してゆく。
【関連ブログ】
『までいの力 』 SEEDS出版, 飯舘村 SEEDS出版
【読んだきっかけ】
読んだのは昨年の夏.単身赴任先での最初の調理が,本書で知った,豚もやし
【一緒に手に取る本】

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