“もし読者が本書を読み始めたときよりもそれ以上の疑問を抱いて読み終えたならば,私は大変光栄である.” 『バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ? 』 レーナード・M・ワプナー 佐藤宏樹, 佐藤かおり訳 青土社

バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ?

バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ?

こんなことがあっていいのだろうかと思う.

サッカーボールをいくつかに分割して,それを再び組み立てることによって,もとのサッカーボールと同じ大きさのサッカーボールを二つつくることができる.

これがバナッハ=タルスキの定理である.これは逆説でもなんでもなく,ごく普通の数学を使って証明できるのである.この事実を使うと,豆を太陽にすることができるのである.この定理を知った時,なぜ世の中が大騒ぎにならないのか,と思うほど驚いた.今まで誰もこんな大事なことを教えてはくれなかった.ただ,この定理の正しいことは証明はできるが,サッカーボールを二つにする具体的な方法は教えてくれない.もし現実には,サッカーボールを二つにすることができないのだとすると,私たちが使っている数学がおかしい,ということになりはしないか.

本書は,この奇妙奇天烈で,怪しげなこの定理を,一般向けにわかりやすく解説してくれる本である.
答えは,無限とは何か,というところにある(らしい).
【関連ブログ】
バナッハとポーランド数学 R.カウージャ  シュプリンガー・フェアラーク東京
【読んだきっかけ】
いろいろ勉強しているうちに,カントール集合論に辿り着いた.『無限への飛翔 集合論の誕生 (大人のための数学 3)』そこで,この定理を発見.驚愕.
【一緒に手に取る本】
同じ頃にでた本.1997年にでた,縦書きの本の再刊とのこと.本書は横書き.『バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ?』よりも,数学的に書かれている.群論による証明も載っている.

新版 バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー)

新版 バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー)

バナッハ=タルスキの定理を一般向けに,直感的にわかりやすく説明しているものはないかと探していたらこれに行き当たった.たかだか,5行程度の文章である.さすが,イアン・スチュアートである.
数学の秘密の本棚

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志賀浩二さんの「大人のための数学」シリーズ,「数学30講」シリーズは素晴らしいです.
無限への飛翔 集合論の誕生 (大人のための数学 3)

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