“数学の娯楽的側面を探検することで,科学的な探究や発見の全体の中で数学が演ずる重要な役割から生じる楽しい副産物が収穫できるのだ” 『偏愛的数学 I 驚異の数 』 アルフレッド・S.ポザマンティエ, イングマール・レーマン 訳:坂井公 岩波書店

偏愛的数学 I 驚異の数

偏愛的数学 I 驚異の数

Mathematical Amazements and Surprises: Fascinating Figures and Noteworthy Numbers

Mathematical Amazements and Surprises: Fascinating Figures and Noteworthy Numbers

  • 作者: Alfred S. Posamentier,Ingmar Lehmann,Herbert A. Hauptman
  • 出版社/メーカー: Prometheus Books
  • 発売日: 2009/06/23
  • メディア: ペーパーバック
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原書が上下二巻に翻訳されたうちの第一巻.数に関する驚くべき事実を集めたもの.高校生時代に,マーチンガードナーの書いた『驚異の数秘術』なる本を偏愛していた私には,なにより嬉しい一冊なのだが,いったいどれくらいの人が本書を買い,読み,楽しむのだろうか.岩波書店の英断を讃えたい.本書のいいところろは,「数」に関する驚きの事実を,入門書的にほんのさわりだけ述べたのではなく(そういう本はたくさんある),たくさんの具体例を紙数を惜しまずに列挙してある点である.多くの人にとっては何の意味もないところに,たくさんのスペースを割いているという点において画期的!
 たとえば,アームストロング数とは

3桁のアームストロング数とは,3桁の数で,各桁の3乗した数を足し合わせると,元の3桁の数に一致する数のこと

3,4,39(!)桁のアームストロング数の例は次のようなもの

アームストロング数は89個しかなく,かつ,最大のものは上記の39桁の数であることが知られている.
 こいした面白い(?)数の例がたくさん載っているのが本書.それを楽しいと思うか,意味ない,と思うかはその人次第.
帯(前書き)より

早い話が,読者には,
この本で,意外で驚くべき数学的現象の例を,
もう十分だというほどに味わってもらいたい.
鑑賞に値する数学には,視覚的にも知的にも,
真の美しさがあるというわれわれの主張を受け入れてもらうために,
どの例も役に立つだろう.

さて,どうでしょう?
 巻末に,ハーバート・アーロン・ハウプトマン(Herbert Aaron Hauptman)という人のあとがきが加えられている.氏によれば,ノーベル賞を受賞した唯一の数学者.Wikipediaによれば,

(1917年2月14日 - 2011年10月23日)は、アメリカ合衆国の数学者。ノーベル化学賞受賞者。分子の結晶構造の決定に新しい数学的方法を導入し、新しい時代を切り開いた。

[http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%83%97%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%B3&oldid=39969753:title=[Wikipedia contributors, "ハーバート・ハウプトマン," Wikipedia, (accessed November 20, 2011)]]
つい最近亡くなられたようです.
【関連読書日誌】
“オイラーの水晶のように透明なラテン語は、西洋の学者たちがこの言語で書くのをやめたときに西洋文明が失ったものに気づかせてくれる” 『素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~』 John Derbyshire, 松浦俊輔訳 日経BP社
“もし読者が本書を読み始めたときよりもそれ以上の疑問を抱いて読み終えたならば,私は大変光栄である.” 『バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ? 』 レーナード・M・ワプナー 佐藤宏樹, 佐藤かおり訳 青土社
【読んだきっかけ】
書評にて.『驚異の数秘術』著者のマーチンガードナーは,日経サイエンス(Scientific American)に数学パズルを連載していた.本書の訳者,坂井公氏は,現在日経サイエンスの類似の記事を連載中.
【一緒に手に取る本】

偏愛的数学 II 魅惑の図形

偏愛的数学 II 魅惑の図形

メイトリックス博士の驚異の数秘術

メイトリックス博士の驚異の数秘術

邦訳は1978年刊.上記は2011年刊.再刊されたのかな.