”「戦利品」であり、今後の世界戦略の重要拠点である基地沖縄を手放す意思など、米側にはまったくなかった” 『「沖縄密約」公開外交文書を読む(上)(下)』 澤地久枝 世界 2011年12月号 2012年 01月号 岩波書店

世界 2011年 12月号 [雑誌]

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世界 2012年 01月号 [雑誌]

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今年は,沖縄密約の本で始まり,その年の最後に,この文章を読む.(実は,上は未読)
「まとめ−最高裁で勝訴します」より

 対米顧慮、面子、建前、四〇年越しの人間関係の因果。そのどれにもかかわりのない、ひたすら「事実」と追究しようとした市民の調査は、今日までかくされてきたものに到達するべく、いくつもの道筋を明らかにした。「事実」を裏づける濃密な状況証拠がこれほどあるとは、予想をはるかに超えていた。

 高裁判決文は、日米両国の外交文書を精査した「市民による調査報告」の質よりも劣っていると感じる。
 沖縄返還問題をつきとめてゆくと、逃れがたく日米安保条約にゆきつく。佐藤総理が述べた「核抜き本土並み」の「本土並み」とは、米軍支配下から日米安保条約の適用内に入ることを意味していたのだ。
 それが沖縄の米軍基地問題の本質である。沖縄返還交渉を外交文書でたどっていて、第二次世界大戦の勝者と敗者、支配と被支配の哀れの落差を痛感した。
 「戦利品」であり、今後の世界戦略の重要拠点である基地沖縄を手放す意思など、米側にはまったくなかった。日本国内と沖縄の世論への対応が避けがたいと見てとり、「返還」交渉を容認、好況の日本経済から一ドルでも多くカネを奪い、施政権は返しても、基地機能は不変と考えた米国相手の返還交渉だったのだ。陽の目を見た外交文書は、息づくかのように、この機微な交渉経過を物語っていた。

文章の最後に書かれている,「密約」問題をともに戦ってきた人たちと間に出来上がった,信頼関係,人間関係の記述が実に気持ちがよい.それにしてもこれらの人たちが存命の間に,一定の結論が得られて本当によかったと思う.
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