“リーダーシップを振るい自己主張、自己顕示の強い人は、その行動で満足を得られる。しかし、自己主張の弱い人は何を満足とすればよいのだろうか?” 『薬も手術もいらない めまい・メニエール病治療 角川SSC新書 (角川SSC新書)』 高橋正紘 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)

薬も手術もいらない めまい・メニエール病治療 角川SSC新書 (角川SSC新書)
- 作者: 高橋正紘
- 出版社/メーカー: 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/01/10
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 13回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
本書を読んで,初めて知った驚くべき事実を知ってびっくり.
医療系の一般向け所は,有象無象たくさんあって,著者が仮に「医学博士」であっても,必ずしも良書,悪書のの見極めは難しい.その中で,本書の記述はやや専門的な説明もあるが,だからこそ,記述が科学的で,説得力を持つ.一般の人向けにも少しでもわかってもらおうとする説明がなされていて,好感がもてる.すなわち,自らの「めまい」を直そうとする人は,すくなくとも,内耳,外耳の構造と,加速度を感じる仕組みを理解しておいたほうがよい,ということだろう.
著者は,メニエール病の治療と研究を続けるために,メニエール病センターを立ち上げた人である.
- メニエール病は,2500から5000人に1人くらいの割合で起こる病気.だが,実際にメニエール病と診断されている人ははるかに多い。難聴,耳鳴り,めまいなどの症状を伴う症例がすべてメニエール病とされてしまっていることによる
- 地震酔い,下船病,乗り物酔い.高山病,動揺病
- 急増中の良性発作性頭位めまい.有効な体操があり
- メニエール病の人は内耳に「内リンパ腫」ができるが,その機序は未解明.メニエールは1974年に厚生省特定疾患(難病)に指定され,40年にわたり研究が続けられているが,わからないことがあまりにも多い.
- 浸透圧利尿薬イソビルドの薬の中心を提案する.対症薬として以外の効能が認められていない.自然寛解の場合もあるのっではない.アメリカでは販売されていない.厚労省の研究班は,薬剤の中長期的効果を治験していない.
- ステロイドは万能薬と言われる.しかし,メニエールへの効果は一時的
- 科学的裏付けのない外科療法
- メニエールは全身病
- 生活習慣の改善と有酸素運動!
あとがきより
リーダーシップを振るい自己主張、自己顕示の強い人は、その行動で満足を得られる。しかし、自己主張の弱い人は何を満足とすればよいのだろうか?周囲を支配するかわりに、周囲から高い評価を得ることで満足を得る、と結論されたのだ。
このような観点からメニエール病の病院を探ると、周囲からの評価不足―報酬不足―が有害と結論された。バランスシートの赤字によって行動の修正を迫られるというのは、経済活動にも通じる普遍的な原理である。
人間は自分が一番かわいく、これが侵害される状況では、自分に不利なふるまいを減らすよう、警報が発令されると解釈される。これは個体の生存を保障するための安全装置であり、乗り物酔いの不快症状と同じである。多数の患者さんを観察して得られたこの結論が、メニエール病に対して行われている現在の治療手段と余りにも隔たりが大きいことに愕然とさせられる。耳鼻科医は症状のみに注意を奪われ、人間としての患者さんを診ていないのではなかろうか?50年以上研究されても解釈がつかないということは、研究のアプローチや作業仮説が間違っているに違いない。
【関連読書日誌】
(URL)“仮説がいったん定説となって権威を持つと,ときに新事実を切り捨てる道具に使われる.” 『マイネカルテ―原田正純聞書』 石黒雅史 西日本新聞社
【読んだきっかけ】
書店
【一緒に手に取る本】