“〈3.11〉は私にとって「人間の存在」を証明する不幸な―しかし人間としての私を力づける―機会だったし、その上にこそ私たちの未来を創ってゆかねばならないだろう” 『いま、大切だと思うこと―〈苛立ちと不安〉から〈いきどおり〉〈義憤〉へ』 樋口陽一 『世界増刊 破局の後を生きる』 2012年 01月号 岩波書店
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この別冊は,「被災の手記」が集められていて,現場の生の感覚が伝わってくる.
ここで,取り合えるのは,冒頭にある,憲法学者,樋口陽一氏による,『いま、大切だと思うこと―〈苛立ちと不安〉から〈いきどおり〉〈義憤〉へ』という小文である.
〈3.11〉後の今また、「近代の罪」を責め「国家はいらない」とする言説が人びとをとらえているようにみえる。その「国家」と「近代」を「耐えられぬほどの軽さ」で扱ってよいのか、というのが私の立場なのだが、そのことについては最近再論した(『法学セミナー』2011年12月号)ので、繰り返すことはしない。
1755年のリスボン大地震を、かのヴォルテールは「神の不在の証明」と言ったという。〈3.11〉は私にとって「人間の存在」を証明する不幸な―しかし人間としての私を力づける―機会だったし、その上にこそ私たちの未来を創ってゆかねばならないだろう。
これを取り上げたのは,後半で紹介されている『怒れ! 憤れ!』に触れたいからだ。この小文を読んだ週の,朝日の書評でも取り上げられていた.
ここに一冊の本がある。小冊子と言った方がよい三〇頁建てのこの本(三ユーロ)が、二〇一〇年一〇月の初刷以来、その一年後の時点で出版元のフランスで二一〇万部のベストセラーとなっている。そのうえ多くの言葉で訳され、ドイツ四五万部、スペイン四三万部、アメリカ五万部、韓国二万部という数字が紹介されている。(『ル・モンド』紙2011.9.28による。中国語訳は原著者がダライ・ラマと面会したことを理由に発行できぬ状況だ。)
原書名は,《Indignez-vous!》(『いきどおれ』『憤慨せよ』),英語版は,《Time for Outrage》.著者,ステファヌ.エセルは,フランスレジスタンスの闘志であり,93歳の元外交官.
そして何より、「経済力と外国の影響力からの独立」は、「新聞の自由とその名誉」だけのことではない。それこそが、「国」そのものを形づくる一人ひとりの人間の「自由とその名誉」にかかわることではないか。
戦後日本の出発点に日本国憲法を手にした私たちにとっての問題も、それと違うものであるはずはない。
憲法学者ならではの発言.『法学セミナー』2011年12月号も読んでみたい.
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- 作者: ステファン・エセル,村井 章子
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