私の読書2011年のベスト10冊(その1)

みすず書房の読書アンケート特集(URL)にならって
2011年私にとっての10冊は以下です.5冊にしようと思いましたが絞りきれませんでした.順不同です.

  1. 『「沖縄核密約」を背負って:若泉敬の生涯』 後藤乾一 岩波書店
  2. 『マイネカルテ―原田正純聞書』 石黒雅史 西日本新聞
  3. 『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』 堀川惠子 講談社
  4. 『福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房
  5. 『発見術としての学問――モンテーニュデカルトパスカル』 塩川徹也 岩波書店
  6. 『完全な人間を目指さなくてもよい理由 遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』 マイケル・J・サンデル ナカニシヤ出版
  7. 『恋の隠し方 ― 兼好と「徒然草」』 光田和伸 青草書房
  8. 『妻との修復 (講談社現代新書)』 嵐山光三郎 講談社
  9. 『父として考える (生活人新書) 』 東浩紀, 宮台真司 日本放送出版協会
  10. 『最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』 ケイト・サマースケイル, 日暮雅通訳 早川書房
  11. (次点)『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』 六草いちか 講談社

とりあえず、最初の5冊について
(1)

「沖縄核密約」を背負って 若泉敬の生涯

「沖縄核密約」を背負って 若泉敬の生涯

沖縄の慰霊碑の前でひざまずきひたすら祈る若泉敬の姿、壮絶な晩年とその最後、昭和を背負った男の生き様。
「運命の人」がドラマ化されました。今にいたる経緯を知っていると、些細な表情の揺れにいたるまで、よく演出されていると感じます。ドラマをどのように締めくくるのかが興味あるところです。ある意味では、いまだ進行中の歴史でもあるからです。
【関連読書日誌】

  • (URL)「戦利品」であり、今後の世界戦略の重要拠点である基地沖縄を手放す意思など、米側にはまったくなかった” 『「沖縄密約」公開外交文書を読む(上)(下)』 澤地久枝 世界 2011年12月号 2012年 01月号 岩波書店
  • (URL)『「沖縄核密約」を背負って:若泉敬の生涯』 後藤乾一 岩波書店
  • (URL)『評伝 若泉敬  −愛国の密使 (文春新書) 』  森田吉彦 文藝春秋
  • (URL)『ふたつの嘘 沖縄密約[1972-2010] 』 諸永裕司 講談社

(2)
『マイネカルテ―原田正純聞書』 石黒雅史 西日本新聞

マイネカルテ―原田正純聞書

マイネカルテ―原田正純聞書

自らの信念を貫き通した人の生き様。原子力の故高木仁三郎氏や小出裕章氏もそうだろう。「美しい」とか「魅力的」とかいう形容詞は軽々しい。彼らのそばには、彼らを信じて見守る人たちが必ずいるに違いない。マスメディアの扱いなど関係ないのだ。上の、若泉敬もそうあるべき人であったに違いないが、晩年は孤独であったか。
【関連読書日誌】

  • (URL)仮説がいったん定説となって権威を持つと,ときに新事実を切り捨てる道具に使われる.”『マイネカルテ―原田正純聞書』 石黒雅史 西日本新聞社

(3)『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』 堀川惠子 講談社

裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

裁かれた命 死刑囚から届いた手紙

堀川惠子による一連の映像と書物は、私にとって衝撃の出会いであった。
【関連読書日誌】

  • (URL)罪を犯すような事態に、自分だけは陥らないと考える人は多いかもしれません。しかし、入生の明暗を分けるその境界線は非常に脆いものです。” 『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』 堀川惠子 講談社
  • (URL)それは、ある意味で“画期的な”法廷だった。二〇一一年の秋,大阪地方裁判所裁判員裁判で行われた、「絞首刑」についての審理。” 『絞首刑は残虐か(上)』 堀川惠子 世界 2012年 01月号 岩波書店
  • (URL)今こそ、私たちの来し方を振り返り、戦後の再スタートの土台に据えた精神を思いおこすべきだろう” 『チンチン電車と女学生』 堀川惠子, 小笠原信之  日本評論社
  • URL)たった一人でもいい、真剣に、本気で、自分を愛してくれる人がいれば、その人は救われる。それが父や母であればよいけれど、それが叶わないこともあるだろう。” 『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』 堀川惠子 日本評論社
  • (URL)“私たちは当たり前のように享受しているこの「戦後」を、二度と「戦前」に引き戻してはならない” 『日本の戦争 BC級戦犯 60年目の遺書』 田原総一朗監修 田中日淳編 堀川惠子聞き手 アスコム

(4)『福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房

福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと

福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと

大震災・原発事故関連は、復刊、再刊も含め山のような本が出版された。冷静で、理性的な文章であり、厚さも手ごろ。物理学と科学史の碩学たる著者ならではの書であろう。
【関連読書日誌】

  • (URL)現在生じている事態は、単なる技術的な欠陥や組織的な不備に起因し、それゆえそのレベルの手直しで解決可能な瑕疵によるものと見るべきではない” 『福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房
  • (URL)科学(者)への信頼は,何が確実に言えて,何が言えないか,それを科学者自身が明確に述べるところに成り立つといえる。科学とは,まずなによりも《限界》の知であるはずである” 『見えないもの,そして見えているのにだれも見ていないもの』 鷲田清一 科学 2011年 07月号 岩波書店
  • (URL)今回の大災害は、これまで通用してきたほとんどの言説を無力化させた。それだけではない。そうした言葉を弄して世の中を煽ったり誑かしたりしてきた連中の本性を暴露させた。” 『津波原発』 佐野眞一 講談社
  • (URL)『核がなくならない7つの理由  (新潮新書)』  春原剛 新潮社

(5)『発見術としての学問――モンテーニュデカルトパスカル』 塩川徹也 岩波書店

発見術としての学問――モンテーニュ、デカルト、パスカル

発見術としての学問――モンテーニュ、デカルト、パスカル

フランス思想への新しい導き手を得た感じである
【関連読書日誌】