“昔のことなら笑いながら話せる。だって本当に楽しいことばかりだったから。未来のことなら笑いながら話せる。だって夢のようなことを実現できると思うから” 『忌野清志郎 瀕死の双六問屋 完全版』 忌野清志郎 新人物往来社

忌野清志郎 瀕死の双六問屋 完全版

忌野清志郎 瀕死の双六問屋 完全版

忌野清志郎の名著『瀕死の双六問屋』の完成版が出たというNEWSは,そういえば以前に呼んだ記憶がある.京都駅の書店のいつもいくコーナーに,「ビニール袋に包まれて」!おいてあった一冊.
 帯から

最終話を含む幻の原稿18話分を収録
音楽への愛と社会への怒りに満ちた
衝撃の問題作、ついに完結!
特製CD付き《リマスター・バージョン》
極上のロックン・ロール4曲、完全復活!

 あとがき その二 には,咽頭ガンを宣告されて以降のことが書かれているが,その最後の文章から.

 『瀕死の双六問屋』の物語は、俺が唯一(絵本以外で)というくらい、真面目に(ゴーストライターやインタビューおこしではなく)自分で書いたものだ。たいして話題にはならなかったが、とても気に入っている一冊である。文庫として復活するとはゴキゲンなことだ。俺の再生、完全復活の先駆けのようで、幸先のよい出来事だと思う。

 (声を失うから)手術をしない選択をしたが,最後は,抗癌剤等の近代医療ではなく,民間療法に頼ったらしい.本当に復活していたら,神話になったであろう.福島の原発事故は,忌野やつかの死に神様が怒ったように思えてならないのだ.
 町田康の解説から

 ときに著者は「これだけは言っておく。ブルースは忘れないほうがいい」とか「ユーモアが大切だ」或いは、「戦争はやめよう。平和に生きよう。そしてみんな平等に暮らそう」といった一見、教え諭すようなことを言う。しかしいろんな意味で間違えてはいけない。これは忌野清志郎の祈りであり切実な告白だ。彼は瀕死だ。でも瀕死の状態で吐かれた言葉こそが、イエイ、切実なのである。

第二十四話 俺を笑わせてくれないか

 昔のことなら笑いながら話せる。だって本当に楽しいことばかりだったから。未来のことなら笑いながら話せる。だって夢のようなことを実現できると思うから。でも、今の気持ちを聞かれたら、ぼくはつまらないことしか言えない。何も想い通りにはいかない。何も変わりゃしない。腰の引けたイクジなしどもがこの世の中を動かしているのさ。もう一度言おう!腰の引けたイクジなしどもがこの世の中を動かしている。これじゃ、みんなカラに閉じこもって昔のことを思い出して笑うしかないのさ。その娘に愛を告白したかったんだ。でも言えなかった。僕はずっとイクジなしなんだ。それも今では苦くて甘い想い出。でも愛を告白したかったんだ。でも言えなかった。わかったよ。わかった、わかった。つまり、あんたはダメだってことさ。それでいいじゃん。だけど、それで迷惑かけた人がいるのならあやまったほうがいいと思うよ。もう一度笑うためにはその前に迷惑をかけた人を笑わせてあげないとね。わかるかい、世の中はそういうもんだ。スジだけは通してくれよ。さあ、笑わせてくれよ、ベイビー。

第三十話 ブルースをつめ込んでワゴン車で出発だ

 私が言いたいのはそんな了見の狭いものではなくて「ブルースを忘れるな」っていうことなんだ。とても大切なことなんだ。君がブルースを忘れないように歌ってあげたいんだ。俺のこの気持ちについて歌っているブルースを歌って君に聴いて欲しいのさ。俺はいつも涙する。「メンバーズ・オンリー」っていう歌を聴いたら誰だって泣くはずだ 

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