“自死が少ないのは、風土だけが理由ではない。人と、人を想う人が作りだした場がある” 『自死の少ない町にて −徳島県旧海部町を歩く』 森川すいめい みすず 2012年 12月号 みすず書房

みすず 2012年 12月号 [雑誌]

みすず 2012年 12月号 [雑誌]

精神科医の森川すいめい氏による小文.

自死が少ないのは、風土だけが理由ではない。人と、人を想う人が作りだした場がある。その場を、生み出し、維持できる仕組みがあると言われる、徳島県南部の旧海部町を歩いてみた。

慶応大岡檀・山内慶太氏らの論文で「朋輩組(ほうばいくみ)」という互助組織のことを知ったのきっかけという.

  • 「申し訳ない」と思う人が少ない
  • 排他性が少ない/個人を大切にする
  • 朋輩組(ほうばいという単語は広辞苑にもある!)の三つの力:コミュニケーション力,情報収集力,危機介入力

こうしてみると、KWだけを並べてみれば,今のネット社会と同じではないか.でも似て非なるもののように感じられてならない.

この町の人は相談することに慣れている

という.これだって,ネットにいくらでもある.何でも教えてくれる人がいる.お互いの顔が見えていることが大事なのか,物理的にそばにいることが大事なのか.我々がネット的朋輩組に慣れていないだけなのか?

問題は課題へと置き換えられ、課題は解決するものだと知っていると、危機介入力がきわめて高くなるから、安心して人は悩むことができる。みなみ旅館に初めて電話してベジタリアン食を希望したときに、あまりにもあっさりと「いいですよ」と言ってもらえたのは(滅多にない)ベジタリアンの西洋人に慣れていたからではなく、この町の人たちが、課題は解決するものだという思考に慣れていたからにほかならない。

参考文献:岡檀、山内慶太.自殺希少地域における自殺予防因子の探索―徳島県旧海部町の住民意識調査から一.日本社会精神医学会雑誌 第20巻3号213‐223頁,2011.(平成23年度日本社会精神医学会優秀論文賞を受賞)
【関連読書日誌】

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  • (URL)彼らに必要なのは、反社会性人格障害者に対して行うような矯正教育や激しい罰則ではなくて、コミュニケーションスキルの獲得ということになる” 『知らずに他人を傷つける人たち  (ベスト新書) 』 香山リカ ベストセラーズ

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

漂流老人ホームレス社会

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現代思想2012年3月号 特集=大震災は終わらない

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