私の読書2012年のベスト10冊(その1)

みすず書房の雑誌「みすず」の読書アンケート特集にならって
2012年私にとっての10冊は以下です.順不同です.(1冊おまけ)
もう6月になってしまいましたが.

  1. 『梅里雪山(メイリーシュエシャン)十七人の友を探して (ヤマケイ文庫)』 小林尚礼 山と渓谷社
  2. 『火花―北条民雄の生涯 (ノンフィクション・シリーズ“人間”) 』  高山文彦 七つ森書館
  3. 若冲 ――広がり続ける宇宙 Kadokawa Art Selection (角川文庫) 』 狩野博幸 角川書店
  4. 『娘の眼から―マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンの私的メモワール』 メアリー・キャサリンベイトソン, 佐藤良明, 保坂嘉恵美訳 国文社
  5. 『日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声』 鶴見俊輔, 関川夏央 筑摩書房
  6. 『全身がん政治家』 与謝野馨, 青木直美 文藝春秋
  7. 『聞き書 野中広務回顧録』 御厨貴, 牧原出 岩波書店
  8. 飼い喰い――三匹の豚とわたし』 内澤旬子 岩波書店
  9. 『オオカミの護符』 小倉美惠子 新潮社
  10. コンニャク屋漂流記』 星野博美 文藝春秋
  11. 『運命を生きる――闘病が開けた人生の扉 (岩波ブックレット) 』 浅野史郎 岩波書店

とりあえず、最初の5冊について
(1)

梅里雪山 (ヤマケイ文庫)

梅里雪山 (ヤマケイ文庫)

生と死,人間と自然をめぐる物語.重いテーマを扱いながらなぜかすがすがしい気持ちになる.著者の姿勢が人間愛を感じさせるからか.単なる登山ものではないし,捜索物語でもない.強く心に残る一冊.たまたま入った書店で見つけて,たまたま買った出会いもの.
【関連読書日誌】

  • (URL)“聖山とは、そこに生きる人々が、自らの存在を賭けて信じているものである” 『梅里雪山(メイリーシュエシャン)十七人の友を探して (ヤマケイ文庫)』 小林尚礼 山と渓谷社
  • (URL)家族や夫や子供たちを置き去りにして、世界最高所の死臭漂う遊技場へ飛び込んでいこうだなんて、どうすればそんな決心ができるのだろう” 『K2 非情の頂―5人の女性サミッターの生と死』 ジェニファージョーダン 山と溪谷社

(2)

2000年以上にわたって人間を苦しめてきた癩(ハンセン病)の現代日本史.霜山徳爾の「モイラのくびき」を思いだす.宿命,すなわち単なる運によって引いてしまった運命の中で,人間はどう生きることができるのか.科学と迷信の境目は常に存在するが,その境界で我々は何えお頼りに判断するのか.どう振る舞うのか.
【関連読書日誌】

  • (URL)癩病患者の収容の歴史をふり返ってみるとき、瞭然と浮かび上がってくるのは、...諸外国への体面から癩者をまるで虫げらのように踏みにじってきた、ファシズムとしての医療のあからさまな姿である” 『火花―北条民雄の生涯』 高山文彦 七つ森書館
  • (URL)今もなお部厚い悪評の層に覆われた笹川良一像の真の姿を掘り起こしてみたかった” 『悪名の棺―笹川良一伝』 工藤美代子 幻冬舎

(3)

伊藤若冲という鬼才の画家に光をあてた書.何よりも若冲の絵はみていて面白い.当時の時代背景や街の姿が浮かんでくるような本.
【関連読書日誌】

  • (URL)若沖は絵を売って生活をする画家ではなかった。しかし、注文がひきもきらずになったとき「斗米庵」と称して、一斗の米代で売るという行為の背景に、売茶翁のすがたをうかうことは、もはや当燃のことというべきだろう” 『若冲 ――広がり続ける宇宙 Kadokawa Art Selection
  • (URL)ともすると社会性を欠くと思われがちな若沖のキヤラクターですが、還暦を前に錦市場の存亡をかけて懸命に立ち働いたことなどが近年の研究で判明しています 『伊藤若沖×素麺』 林綾野のべべたくなるモナリザ AERA 2012年8月27日

(4)

娘の眼から―マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンの私的メモワール

娘の眼から―マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンの私的メモワール

マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンという巨人を母と父に持ち,自らも学者である著者による書.愛情を抱きつつ,情に流されることなく,知的,理性的記述.翻訳と解説も秀逸.
【関連読書日誌】

  • (URL)戦争が煽り立てる「明快さ」が、ある種大きな解放感をもたらすものであること、どのような社会にも、戦争に加担することによって暖昧さや迷いを解消してしまえるという誘惑があること” 『娘の眼から―マーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンの私的メモワール』メアリー・キャサリンベイトソン, 佐藤良明, 保坂嘉恵美訳 国文社
  • (URL)悲しみの谷では、翼を広げよう” 『死の海を泳いで―スーザン・ソンタグ最期の日々』 デイヴィッドリーフ, David Rieff, 上岡伸雄訳 岩波書店

(5)

日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声

日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声

日本で教育を受けた知識人とは全く異なる知的抽出を持ち,欧米帰りの学者にありがちな西欧思想の単なる紹介者ではない,鶴見俊輔の魅力.
【関連読書日誌】