“それも全部、自分たちが飲み込みながら次にバトンを渡さなければいけない。そのときに“ノー”と言う姿勢で何かを渡せるかというと、何も渡せないんです” 『有次と包丁』 第10回 江弘毅 波 2013年 09月号 新潮社
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『考える人』2013年春号で,同じ著者による写真入りの特別寄稿「有次 包丁をつくる人,使う人」などもあった.
この記事に魅せられて,京都の有次のお店にいってみたり(是非一度おすすめします),たまたま,母が包丁を買い替えたいというので,有次へ連れて行き,一丁買うことになったり,今や,私の単身赴任先の手元には,年季の入った築地有次の,柳刃包丁と出刃包丁があるという事態に至ってしまった.
日本の伝統の職人技というものがどういうものか,そして,それがどのように受け継がれていくのか,ということがよくわかる.
第1回「京都・錦市場の[有次]」第2回「親戚の家の3本」,第3回「」,第4回「包丁屋としての[有次]へ」,第5回「堺・沖芝昴さんの仕事」,第6回「大阪の蛸引包丁」第7回「「見て感じた」包丁」,第8回「板前割烹の誕生」,第9回「海外へ」,第10回「かっこよさ」
なかでも魚の扱いなら和庖丁の独壇場だ。鲷や白身魚を捌き、身をおろすためたけの出刃包丁。片刃の柳刃刺身包丁で「引いた」身の切断面は繊維が崩れず、両刃の洋庖丁とはその仕上がりが格段に違う。
「堺極」の煙草庖丁について
室町時代の末期、鉄砲と一緒にポルトガル人によってタパコがわが国に伝えられ、国内でタパコが栽培されはじめると、喫堙人口が一気に増えた。それを刻むよく切れる庖丁が必要となり、豊臣時代に堺で堙草鹿丁の鍛造が始まる。その起源の一つとして知られる説は、梅枝七郎右衛門の手による包丁で、その子作左衛門はこれを京都に売り広めた。砂岩をも割る切れ味ゆえ「石割包丁」と異名をとり、以後作左衛門の子孫は石割を姓とした。万治から寛文にかけて11660年代頃の話である。享保年間(1730年頃)になると、これらの優れた煙草庖丁の売れ行きに目をつけた徳川幕府は、煙草包丁鍛冶を堺北部の中浜筋に集め仲間株を与えた。庖丁には鍛冶屋の銘に加え「堺極」印、つまり「極め付き」が入り、以後専売品として全国に売りさばかれた。打刃物産地堺から京都へ、そして全国へという流れにも注目していただきたい。
おいしいものをつくるというジャンル的な話に限らず、時代が変わればニーズも変わり、材料がなくなったり、職人さんがいなくなったり、いろんなことが起きますね。それも全部、自分たちが飲み込みながら次にバトンを渡さなければいけない。そのときに“ノー”と言う姿勢で何かを渡せるかというと、何も渡せないんです」
【有次】の強さの原点は「"ノー"と言わない脳みそなんだよ」。輿水さんはそう表現する。それに対しては「わたしらのように毎日修理をやり、鍛冶職人の仕事を横で見ている者にとっては、别のものをあつらえる拵えるんはたやすいことです」と事も無げに寺久保社長は言う。
京都錦市場に面した【有次】のショーゥィンドゥは、大阪ミナミの道具屋筋の料理道具店とはちょっと違って季節感がある。その季節に食ベるものが決まっていたり、こんなときの作法はこうだとか、京都はとても面倒くさいと思つたりもする。けれどもそれらは本来、人を縛ったりストレスを与えるためのものでなく、根底には楽しくしあわせに日常を暮らすための知恵があり,そこにストーリーがあって動かない。
連載にでてくる料理店
- 福喜鮨(大阪・日本橋)
- 喜庵(大阪.北新地)
- 有喜屋(うきや)(京都三条)
- たん熊北店
- イルギオットーネ(京都)
- ミチノ・ル・トゥールビヨン(大阪・福島)
- レザール・サンテ(豊中)
- レストランTokiwa(奈良)
- 燻(赤坂)
【関連読書日誌】
【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

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