“この勇気を与えたのは、家に戻つた父が読めと示唆した、鴎外の史伝『渋江抽斎』ではないか。読了後、抽斎の妻五百(いお)も須賀には「灯台のような存在」となつた” 『須賀敦子の方へ』 第一部最終回「海の彼方へ」 松山巌 考える人 2013年 春号 新潮社
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最終回は「海の彼方へ」である.
須賀敦子の文章のファンは多い.福岡伸一もその一人であることを最近知った.
人を愛し、書物を愛し、
たぐい稀な数々の作品を
紡ぎ出した須賀さん。
友人としてつきあい、語り合つて
なお、須賀さんがどぅ生きたのか
知り尽くすことはできない。
須賀敦子の核心を目指し、
その読書体験を糸口に
たどってみたい
「世界をよこにつなげる思想」『本に読まれて』所収からの引用を受けて,
「工場で働く」という件りは無論、シモーヌ・ヴェイユの代表作『工場日記』を受けている。ヴェイユはエマニュエル・ムーニエが主宰した雑誌『エスプリ』にスペイン戦争の際にはルポを書き、その後も寄稿している。だから須賀たちもヴエイユについては、カトリック連盟の集まりを通じて少しは耳にしていただろうが、ヴエイユやシユタインについて詳しく教えたのは、三雲苑子さんと、須賀の帰国直前に結婚した三雲夏生(なつみ)である
第二次大戦後の難しい時代を,高い志をもって,女性としての,人間としての生き方を模索していた須賀にとって,シモーヌ・ヴェイユとの交感はあって当然だろう.そして,もう一つは,渋江抽斎の五百.なるほどね.
いくら須賀であれ、病気がちの母や母の世話をする妹のことを思えば、留学は自分の我儘だと考えたに違いない。しかしともかく決めた。決めた以上先に進む。この勇気を与えたのは、家に戻つた父が読めと示唆した、鴎外の史伝『渋江抽斎』ではないか。読了後、抽斎の妻五百(いお)も須賀には「灯台のような存在」となつた。家に縛られず、婚期を逃しても自分が認めた抽斎に嫁ぐ。五百の生き方を知り、日本人の女でも、自分の思った道をまつすぐに、しかもてきぱきと物事を解決していったのだ、と思つたのだ。
【関連読書日誌】
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- (URL)“男にも女にもいろんな生き方があり、いろんな幸せがあるのだということが、この国の常識になるのはいったいいつの日だろう” 『如月小春は広場だった―六〇人が語る如月小春 』 『如月小春は広場だった』編集委員会(西堂行人+外岡尚美+渡辺弘+楫屋一之) 新宿書房
- (URL)“明治人は過剰なまでに果断であった。(略)明治日本もまた過剰なまでに果断であった” 【津田梅子 日本語が得意でなかった武士の娘】 『「一九〇五年」の彼ら』 関川夏央 NHK出版
【読んだきっかけ】
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