“彼らは非力でした.でも,たぶん,抵抗と協力の中間に位置する何かはあつたはず。この点に関してのみ言います。違う振る舞いができた指導者もいたのではと” 映画「ハンナ・アーレント」パンフレット EQUIPE DE CINEMA 196
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大事なところを引用し忘れていました。
ミラー「先生,先生は主張してますね.“ユダヤ人指導者の協力で死者が増えた”」
アーレント「それは裁判で発覚した問題です.ユダヤ人指導者は,アイヒマンの仕事に関与してました」
ミラー「それはユダヤ人への非難ですよ(座る)」
アーレン卜「(力を込めて)非難など一度もしてません.彼らは非力でした.でも,たぶん,抵抗と協力の中間に位置する何かは…あつたはず.この点に関してのみ言います.違う振る舞いができた指導者もいたのではと」
抵抗と協力の中間に位置する何か、違う振る舞いができた人もいたのではないか。この指摘は、さまざまな場で、それこそ日常のごく些細な出来事の中にも、あたるであろう。
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督へのインタビューから
−−バルバラ•スコヴアの見事な演技は明らかですが,中でも非常に素晴らしいシーンは,最後に登場する8分間のスピーチですね.普通の監督なら,これほど長時間のスピーチを観客に見せ続ける危険は冒さないと思います.なぜ,そうしたのですか?
多くの人々が,アーレントを映画化するならスピーチで始めるべきだ,と感じていました.しかし本作では,女友達が互いの夫について話し合うような,軽い会話のシーンで始めることにしました.そして,最後にスピーチを持ってくることで,彼女の思考が明らかにした最終結論を,観客が理解できるようにしたかったのです.アーレントがアイヒマンの人間像を鋭く観察し,その後,冷酷で不当な批判に晒されると,観客は彼女自身の声に耳を傾けたいと望むはずです.つまり,最後のスピーチに達する頃には,観客は彼女のキャラクタ一と考え方にすっかり惚れこんでしまうのです.そして,知性と感情にあふれたバルバラ•スコヴァのスピーチの演技に,きっと息を呑むことでしょう.そのスピーチに向かって徐々に物語を進めながら,あたかもレンガを積み重ねていくように,アーレントの複雑な思想を理解しやすくするきっかけを与え,観客が“悪の凡庸さ”の意味を理解できるようにしました.知的な意味でも,エモーシヨナルな意味でも,スピーチは映画全体のクライマックスとなっています.
シモーヌ・ヴェイユ、スーザン・ソンダクなど、欧米の女性知識人を思いださせる。
【関連読書日誌】
- (URL)“死者は永遠に去って、生者に語りかけには絶対戻って来ない、と思うのは、明らかに間違っている。死者は生者に語りかけに戻ってくる。それこそが彼らのすることだし、死者の主な仕事と言っても良い。” 『アンドレとシモーヌ―ヴェイユ家の物語』 シルヴィヴェイユ, Sylvie Weil,稲葉延子
- (URL)“悲しみの谷では、翼を広げよう” 『死の海を泳いで―スーザン・ソンタグ最期の日々』 デイヴィッドリーフ, David Rieff, 上岡伸雄訳 岩波書店
- (URL)““思考の嵐”がもたらすのは,知識ではありません.善悪を区別する能力であり,美醜を見分ける力です.私が望むのは,考えることで人間が強くなることです.危機的状況にあっても,考え抜くことで破滅に至らぬよう” 映画「ハンナ・アーレント」パンフレット EQUIPE DE CINEMA 196
【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

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