“家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ” 『世界から猫が消えたなら』  (小学館文庫)  川村元気  小学館

 高校生の息子がアメリカへの小旅行の折り、成田で買って読んできたらしい。いかにもライトノベル風で、帯の推薦文は、秋元康角田光代小山薫堂SEKAI NO OWARI、解説は中森明夫佐藤健宮崎あおい主演、永井聡監督で映画化されるらしい。73万部突破、2013年本屋大賞。というわけで、ちょっと躊躇したのだが、この作者が、映画「電車男」「告白」「悪人」のプロデュースをした人だと略歴にあり、読んでみようかと思った次第。小一時間で読了。
p.77

でもよく考えたら、僕の心にはそんな小さな痛みがたさんある。その小さな痛みのことを、人は後悔と呼ぶのだろう。

p.176

 家族だから。そこにいることが当たり前で、当然いつまでもうまくやっていけるものだと信じて疑わなかった。そう思って、お互いの話を聞かず、自分お正義だけを主張し続けた。
 でもそれは違った。
 家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ。

p.199

「明日死ぬかもしれないと思う人間は、限られている時間を目いっぱい生きるんだ」
 そんなこと言う人がいる。
 でもそれは嘘だと僕は思う。
 人は自分の死を自覚したときから、生きる希望と死へ折り合いをゆるやかにつけていくだけなんだ。たくさんの些細な後悔や、叶えられなかった夢を思い出しながら。
 でも世界から何かを消す権利を得た僕は、その後悔こそが美しと思える。それこそが僕が生きてきた証だからだ。

【関連読書日誌】

  • (URL)人生の終わりに近づくと−いや、人生そのものでなく、その人生で何かを変える可能性がほぼなくなるころに近づくと−人にはしばし立ち尽くす時聞が与えられる。ほかに何か間違えたことはないか…。そう自らに問いかけるには十分な時間だ” 『終わりの感覚』 (新潮社)
  • (URL)運命とは、人生の中での出会いのことである。出会った人との関係は一生続き、出会ったものごとの影響は、死ぬまで残る” 『運命を生きる――闘病が開けた人生の扉 (岩波ブックレット) 』 浅野史郎 岩波書店
  • (URL)思っている限り、人は生き続ける。 忘れること、忘れられることを恐れながら、それでも生きていこう” 『コンニャク屋漂流記』 星野博美 文藝春秋
  • (URL)幸せだった思い出を語るのが,いちばんうれしいことではないか” 『いまも、君を想う』  川本三郎 新潮社

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

仕事。

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億男

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