私の読書2011年のベスト10冊(その2)

みすず書房の読書アンケート特集(URL)にならって
2011年私にとっての10冊は以下です.5冊にしようと思いましたが絞りきれませんでした.順不同です.

  1. 『「沖縄核密約」を背負って:若泉敬の生涯』 後藤乾一 岩波書店
  2. 『マイネカルテ―原田正純聞書』 石黒雅史 西日本新聞
  3. 『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』 堀川惠子 講談社
  4. 『福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと』 山本義隆 みすず書房
  5. 『発見術としての学問――モンテーニュデカルトパスカル』 塩川徹也 岩波書店
  6. 『完全な人間を目指さなくてもよい理由 遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』 マイケル・J・サンデル ナカニシヤ出版
  7. 『恋の隠し方 ― 兼好と「徒然草」』 光田和伸 青草書房
  8. 『妻との修復 (講談社現代新書)』 嵐山光三郎 講談社
  9. 『父として考える (生活人新書) 』 東浩紀, 宮台真司 日本放送出版協会
  10. 『最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』 ケイト・サマースケイル, 日暮雅通訳 早川書房
  11. (次点)『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』 六草いちか 講談社

後半の5冊についてです.前半の5冊についてはこちら(URL)
(6)『完全な人間を目指さなくてもよい理由 遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』 マイケル・J・サンデル ナカニシヤ出版

完全な人間を目指さなくてもよい理由?遺伝子操作とエンハンスメントの倫理?

完全な人間を目指さなくてもよい理由?遺伝子操作とエンハンスメントの倫理?

 生命倫理を考える上で必読の一冊であろう.人間としての最後の一線を守り抜こうとする著者の姿勢に強い共感を覚える.それは理屈,論理ではなく,敢えて言えば信仰に近いものかもしれない.NHKのテレビ番組におけるサンデル教授だけを見ていてはいけない.
【関連読書日誌】

  • (URL)“われわれがなすべきことは,… 贈られたものや不完全な存在者としての人間の限界に対してよりいっそう包容力のある社会体制・政治体制を創り出せるよう,最大限に努力することなのである.”『完全な人間を目指さなくてもよい理由 遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』 マイケル・J・サンデル ナカニシヤ出版
  • (URL)“古い病気に新しい治療法が見つかる.すばらしい.でも,無慈悲で,残酷な世界でもある.”『わたしを離さないで  (ハヤカワepi文庫) 』 カズオ・イシグロ  土屋政雄 訳 早川書房

(7)『恋の隠し方 ― 兼好と「徒然草」』 光田和伸 青草書房
徒然草は奥が深い.世捨て人のエセーなどでは決してない.いろいろ読み漁った末にたどりついたのが本書である.

恋の隠し方 ― 兼好と「徒然草」

恋の隠し方 ― 兼好と「徒然草」

【関連読書日誌】

(8)『妻との修復 (講談社現代新書)』 嵐山光三郎 講談社

妻との修復 (講談社現代新書)

妻との修復 (講談社現代新書)

嵐山光三郎なぎら健壱,この二人は人生を楽しむ達人であると思う.なぜか2冊も持っていて家族から失笑を買った本書であるが,ふざけた本でもなければ,深刻な本でもない.昔の文学者,哲人や,著者の友人(?)の例を引き合いに出しながら,人生の本質をつく,といっては言い過ぎか.再読に耐える本である.
【関連読書日誌】

(9)『父として考える (生活人新書) 』 東浩紀, 宮台真司 日本放送出版協会

父として考える (生活人新書)

父として考える (生活人新書)

この二人が,子供持つと,何を考えるか,それを見るだけでも楽しいのであるが,ここに収められている対話は,父と子の関係に留まらず,人間の生活全般におよぶ.対話の採録は往々にして散漫になることが多いが,さすがにこの二人の対話となると密度が濃い.
【関連読書日誌】

  • (URL)“東:その「無駄話」によって、本来は開けるはずだったのに閉じてしまっているコミュニケーションの回路が、再活性化されて動き出すからです。”“宮台:最近、面白いことに気がつきました。ソーシャルスキルのある人間ほど単純労働 を嫌がらないことなんです。” 『父として考える (生活人新書) 』 東浩紀, 宮台真司 日本放送出版協会

(10)『最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』 ケイト・サマースケイル, 日暮雅通訳 早川書房

最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件

最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件

ノンフィクションではあるが,ミステリーとしても楽しめるし.ある一族の波乱の物語としても読める.20世紀初頭のイギリス社会,文化の描写もよい.もっと話題になってよい本だと思います.
【関連読書日誌】

  • (URL)“探偵というものが生み出されたのは、ごく最近のことでだった” “ヴィクトリア朝時代の探偵は、俗世における予言者や聖職者の代役であった” 『最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』 ケイト・サマースケイル, Kate Summerscale, 日暮雅通訳 早川書房
  • (URL)“最初の球状パールは一九〇七年に二人の日本人科学者によって作られたとされているが、最近の研究では、その技術も、おそらくは真珠そのものも、彼らより先にウィリアム・サヴィル=ケントが開発したものだろうと考えられている。”『最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』 ケイト・サマースケイル,日暮雅通訳 早川書房