“薬物依存症患者は、薬物が引き起こす、それこそめくるめく「快感」 が忘れられないがゆえに薬物を手放せない(=正の強化)のではない。 その薬物が、これまでずっと自分を苛んできた「苦痛」を一時的に消してくれるがゆえ、 薬物を手放せないのだ(負の強化)”『依存症、かえられるもの/かえられないもの』 (「みすず 2018年11月号)松本俊彦
昨年から、「みすず」で国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長、松本俊彦氏による連載『依存症、かえられるもの/かえられないもの』がはじまった。2019年4月号で第四回である。初回で語られた氏自身の若い頃のエピソードも衝撃的で、引きずり込まれるように読んでいる。
みすず 2018年11月号
連載第3回「生きのびるためのセガ・ラリー・チャンピオンシップ」
私はアディクションに関してこれまでとは違う二つの視点を持つことができた。一つは、トラウマ体験が引き起こす深刻な影響であった。そしてもう一つは、薬物依存症の本質は「快感」ではなく「苦痛」である、という認識だった。
薬物依存症患者は、薬物が引き起こす、それこそめくるめく「快感」が忘れられないがゆえに薬物を手放せない(=正の強化)のではない。その薬物が、これまでずっと自分を苛んできた「苦痛」を一時的に消してくれるがゆえ、薬物を手放せないのだ(負の強化)
生きのびるための不健康。しかし、それはなんらかの依存症を抱える人だけのものではないのかもしれないと思う。一見すると健康そうに日々のルーチンを生きている人たちのなかにも、ささやかな不健康や痛みでバランスをとっている人は少なくないではなかろうか。
みすず 2019年4月号
連載第4回 「神話を乗り越えて」
なにより驚くのは、
かつての精神医学の世界には、不思議な神話はいくつもあった。
ということである。例えば、
- 「うつ病患者を励ましてはいけない」
- 「統合失調症に幻聴や妄想の内容をくりかえし聴いてはいけない」
- 「患者のリストカットに関心を抱いたり、主治医自ら傷の手当てをしたりしてはいけない」
- 「悩んでいる患者に対して安易に自殺念慮について質問してはいけない」
- 「患者のトラウマ体験について質問してはいけない」
少年矯正の世界から学んだことが二つある。一つは、「困った人は困っている人かもしれない」ということ、そしてもう一つは、「暴力は自然発生するものではなく、他者から学ぶものである」ということだ。
【関連読書日誌】
【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】
自傷・自殺のことがわかる本 自分を傷つけない生き方のレッスン (健康ライブラリーイラスト版)
- 作者: 松本俊彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/02/15
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