『そして、僕はOEDを読んだ』 アモン・シェイ 田村幸誠 訳 三省堂

そして、僕はOEDを読んだ

そして、僕はOEDを読んだ

OED(Oxford English Dictionary:全20巻,2万ページからなる最大の英語辞書)を最初から最後まで読み通した人がいる,と聞いて,ほおーと感じたり,どんな人とか興味をもったり,一瞬でも自分もやってみようかと思ったり人には,お薦めの本.そういう人は言葉に対して何らかの愛着を感じている人であろうから.著者のホームページも洒落ている.

原題は“Reading the OED: One Man, One Year, 21,730 Pages”.軽いエッセーといえばそうなのだが,OEDに出てくる魅力的(?)な単語とその意味がAからZまで並べられていて,23章仕立てになっている.OEDの凄いところは,用例は一つも知られていなくて,数百年前の辞書に載っていたという理由で採録されている語があるということだろう.

Acnestis(動物の肩から腰にかけての部分で,かこうと思っても手が届かないところ)なんて,ちょっと使ってみたくなる.語源は,古代ギリシャ語らしい.

こういう本の翻訳は,かなり難しいのではないかと素人ながら推察するのであるが,大変読みやすい肩の凝らない本に仕上がっている.言語学を専門とする訳者が,エスキモー語の研究のためにアラスカに滞在中,たまたま巨大スーパーの雑誌売り場で巡り会った

さて,これで思い出したことをいくつか.

  • 訳者もあとがきで紹介しているが,OEDの編纂にまつわる物語『博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話』は抜群に面白い.翻訳当時,日本では書評で少し話題になったが,アメリカでは,空港で山積みになっているほどのベストセラーだったとか.
  • 日本でも,『日本語大シソーラス―類語検索大辞典―』が何年か前にでて話題になりました.わたしも時々御世話になっていますが,これも,個人がこつこつと作り上げたユニークな辞書ということで話題になりました.
  • ジョン・ランプリエールの辞書 (海外文学セレクション)』これは小説だが,翻訳出版当時,「エーコ+ピンチョン+ディケンズ+007」というのが宣伝文句だった.このランプリエールという人は,最大の固有名詞辞書をつり上げた18世紀の人.
  • 語学の勉強のため,辞書を最初から読む,人によっては食べる!,というのは,もう昔の話しだろうか.電子辞書の時代だから,最近の中学生,高校生は,紙の辞書は持たないし,引こうともしない.「辞書を引く」という言葉はそのうち使わなくなるような気がする.
  • 日本の電子辞書にOEDが入っていることを著者は知っているかしら.
  • 大昔読んだ,ジェフリー・アーチャーの小説に,主人公と交流を持つ,勉学の機会をもつことができなかった薄幸の(?)娼婦が,百科事典をAから順番に読んでいて今?までいているの,というエピソードがあった.なぜだか,今でも覚えている.
  • その昔,「たほいや」という深夜番組があったのを思い出しました.辞書を使って行うゲームで,欧米のfictionary(dictionaryのもじり)というゲームの日本語版だそうです.(cf.wikipedia:たほいや)かなりマニアックな番組でした.たいへんよくできたゲームだと思います.

【読んだきっかけ】書店にて.
【一緒に手に取る本】
タイトルも表紙デザインも原書の方が好きだ.

Reading the OED: One Man, One Year, 21,730 Pages

Reading the OED: One Man, One Year, 21,730 Pages

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話

文庫版はこちら『博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)
日本語大シソーラス―類語検索大辞典―

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ジョン・ランプリエールの辞書 (海外文学セレクション)

ジョン・ランプリエールの辞書 (海外文学セレクション)

文庫版はこちら『ジョン・ランプリエールの辞書 (上) (創元推理文庫)』『ジョン・ランプリエールの辞書 (下) (創元推理文庫)
Oxford English Dictionary, 2nd Edition, Version 4.0 (Windows & Mac) (CD-ROM)

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