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“居間中心住宅の主張は、伝統的な男女観.人間観の転換を求める主張を暗に含んでいる。そしてそのことは容易に国家のあり方までもつながってしまう。” 『愉快な家  西村伊作の建築 (INAX BOOKLET) 』 黒川創, 藤森照信, 坂倉竹之助, 大竹誠, 田中修司, 住友和子編集室,

愉快な家 西村伊作の建築 (INAX BOOKLET)

愉快な家 西村伊作の建築 (INAX BOOKLET)

INAXギャラリで開催されていた,「愉快な家 西村伊作の建築」展をまとめた小冊子.なによりも,「愉快な家」という展覧会タイトルがいい.これは,伊作が,大正8年(!)に著した『楽しき住家』に由来するのだろう.明治大正から昭和初期にかけた時代を,こんなに楽しく,そして,愉しき生きた人はそんなにいないだろう.
本誌冒頭より

西村伊作
多才な自由人として生涯を生きた西村伊作。幼い頃から絵を描き、独学で写真を撮り、陶芸に親しんだ。大正から昭和初めにかけては数多くの建築を手がけ、家具をデザインし、庭づくりにも意を注いだ、一方で、西洋料理をつくり、子供服もデザインし、生活全般にわたる啓蒙活動をおこなって、多数の著書を出版。そして、自由教育をモットーとする文化学院を私財を投じて創立した。生活を芸術として生きた伊作尾の軌跡をを、あまり知られることのなかった建築に焦点を当てて紹介する。

愉快な家
伊作が家に求めたもの。それは自分の理想とする生活を実践するために、家族とともに愉快に暮らす住まいだった。家長中心の旧弊な間取りを排し、家族団樂を大切にした居間中心の家へ。新しいライフスタイルの提唱は、先駆的な試みだったといえるだろう。見栄や体裁にとらわれず、できるだけ簡素で、飾り気のない家。そして、気のおけない、人と人の心に隔てをつくらない家。家族と生活を愛した伊作は、あくまでも生活者の視点から、愉快な住まいづくりに情熱を傾けた。

田中修司氏による「大正デモクラシーの住まい 西村伊作の住宅」より

居間中心住宅の主張は、伝統的な男女観.人間観の転換を求める主張を暗に含んでいる。そしてそのことは容易に国家のあり方までもつながってしまう。この形式の住宅の主張にはこのような乗り越えるべき大きな障壁があり、国家を背負うための人材を養成ずるいわば将来を約束された帝大卒の建築家がこの主張に躊躇することは理解できなくはない。一方、西村にとって初めから障壁などなく、彼にとっては当然の主張であった。

田中氏によるこの指摘は鋭い.
【関連ブログ】
“ブルジョアの排撃,つまり、全体主義の時代風潮とは、そのようなかたちで、大衆の側からの「平等」への願いを含んでいる” 『きれいな風貌―西村伊作伝』 黒川創 新潮社
【読んだきっかけ】
知人に,伊作設計の建築物に住む人がおり,その他,いろいろなご縁で,西村伊作のことを知るようになった.INAXギャラリーは,非常に落ち着いた,楽しい空間.お隣のINAXブックギャラリーがこれがまた,小さいけれど何時間いても飽きない本屋さん.思わず買い込んでしまいました.
【一緒に手に取る本】

きれいな風貌―西村伊作伝

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西村伊作の楽しき住家―大正デモクラシーの住い

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パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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