“田中は何としても安保条約を通さなければいけない、軍備費用を復興に費さなければならない、日本の経済的な繁栄のためにも必要なんだといぅ信念を持っていた” 『決定版 私の田中角栄日記』 (新潮文庫) 佐藤昭子 新潮社

決定版 私の田中角栄日記(新潮文庫)

決定版 私の田中角栄日記(新潮文庫)

ちょっとした角栄ブームということもあり、書店に関連本が並びだした頃、ブームとはまだ気がつかずに手に取った1冊。もちろん、著者がどういう方かは知った上で。立て続けに、本書を含め3冊を読む。他の二冊は、
田中角栄伝説 (光文社知恵の森文庫)

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なかなかいい選択であったように思う。かつて読んだものに、
淋しき越山会の女王―他六編 (岩波現代文庫―社会)

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田中角栄にとって堪えたのは、立花隆による金脈を扱った「田中角栄研究」よりも、文芸春秋の同じ号に掲載された児玉による「淋しき越山会の女王」であったと言われる。
P.14

「人間五十年
 化転のぅちを較ぶれば
 夢幻のごとくなり」
と、『敦盛』を好んで舞つた信長的なものを、私は田中にだぶらせていた。田中がある時相川音頭に合わせて舞つたことがあった。僅かな人生にー生を燃焼させる男舞に、これは武士の舞だと田中は説明した。

P.37

「きょうは二月二十三日か。また君のお母さんの祥月命日だなあ。ほんとに不思議な因縁だ。俺と君が初めて会ったのもお母さんの命日だったし、こうして会えたのは、死んでも死に切れないで君のことを心配していたお母さんが俺に君を託したんだよ」
 それから三十年余、田中は毎年ニ月ニ十三日には必ずニ人だけの食事にさそってくれた。病気で倒れるまで、一年も欠かすことなく。

P.45

後の話になるが、田中は若い議員連中が来るたびに、地方のことは県会議員に任せればいい、君たちは立法府の讓員なのだから議員立法をしなさいとすすめた。そうすればうんと勉強になるし、それが何よりの選挙運動にもなるんたと。
「やり方がわからなければ、俺の持ってる知恵を全部貸してやる」
そう何回も言ったけれど、
「いやあ、オヤジさんは天才だからできるけど、俺たちはそんな力がない。選挙区通いをして、落選しないように運動するのが先決てす」
と言うばかりで、誰も本気で取り組もうとしなかった。結局、国会議員議員立法に取り組まなくなったことが、官僚依存で政治家を怠惰にし、自らを選挙屋に貶めてしまったのだ。

P.48

初めての外遊の時を別にすれば、田中から口紅ひとつプレゼントされたことがない。
 口紅と言えば、プレゼントされるどころか、田中は口紅やお化粧が大嫌いだった。

P.58

田中は何としても安保条約を通さなければいけない、軍備費用を復興に費さなければならない、日本の経済的な繁栄のためにも必要なんだといぅ信念を持っていた。

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