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“自然は人間の営みとは無関係に美しい” 『秋、穂高で』 医師の山歩き 3 山本太郎 みすず 2012年 12月号 みすず書房

みすず 2012年 12月号 [雑誌]

みすず 2012年 12月号 [雑誌]

長崎大学熱帯医学研究所に勤める医師である、山本太郎氏による山歩き紀行の連載。秋の穂高行のともとなったのは、フランクル著の新訳「夜と霧」である。高校生時に読んだ旧訳本を、今度は新訳を穂高に抱かれて読む。編集者との会話で「生き残った者の責務と呵責」が話題になったことがきっかけだと言う。震災、戦争、事故などでも生き残った人の「呵責」が問われるのはは悲しい現実。フランクルの「最もよき人は帰ってこなかった」という言葉となぜか呼応して聞こえてしまう。

自然は人間の営みとは無関係に美しい。小さな人間の感傷など無視するかのような圧倒的な美しさで迫ってくる。

生き残ったフランクルの苦しみは想像に余りある。それを癒やすには、記憶を紡ぎ出し、それを物語として再構築する過程が必要だったに違いない。それがなければ、強制収容所を出た後の人生を生きていけなかったに違いない。それが、いかに筆舌に尽くしがたい過程だとしても。

【関連読書日誌】

  • (URL)何千もの幸運な偶然によって、あるいはお望みなら神の奇跡によってと言ってもいいが、とにかく生きて帰ったわたしたちは、みなそのことを知っている。わたしたちはためらわずに言うことができる。いい人は帰ってこなかった、と” 『夜と霧 新版』 ヴィクトール・E・フランクル 池田香代子訳 みすず書房
  • (URL)自己反省を持つ人にあっては「知ることは超えることである」ということを信じたい。そして、ふたたびかかる悲劇への道を、我々の日常の政治的決意の表現によって、閉ざさねばならないと思う” 『夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録』 V.E.フランクル, 霜山徳爾訳 みすず書房
  • (URL)心理療法には、どうしても譲ることのできない点がある。それは、人間というものは、憎しみを分かつためではなく、共生共苦の慈悲を分かつために生まれてきた、ということである” 『素足の心理療法  (始まりの本) 』 霜山徳爾, 妙木浩之[解説] みすず書房

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

フランクル『夜と霧』への旅

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それでも人生にイエスと言う

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