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“清志郎は届けられた遺品の中にあった実母の写真をいつも持ち歩いては、とてもうれしそうに、みんなに自慢するかのように見せていた” 『あの頃、忌野清志郎と  ボスと私の40年』 片岡たまき 宝島社

あの頃、忌野清志郎と ~ボスと私の40年

あの頃、忌野清志郎と ~ボスと私の40年

忌野清志郎の衣装係,マネージャを務めた著者の思い出話という色彩が強いが,忌野のすぐ近くにいた人にしか分からない忌野清志郎の魅力が伝わってくる.しかし,とにかく年季の入り方が半端ではないのだ.まだ周囲がアイドルと追っかけている年頃に,まだ人気が出る前の,フォークソングとも言える歌を歌っている時代に,忌野を知り,はまり,ライブハウスをまわり(コンサートにいくような中学生は不良とみなされた時代である),事務所の職員募集を待ち続け,念願かなってスタッフ入りする.
 忌野清志郎が3歳の時に死に別れた母のこと,父のこと,育てられた家のこと,熱狂的ファンならば知っていたことかもしれないが,そうした,プライベートについても記載がある.愛されて育ったことがわかってほっとした.「Covers」のこともなるほどなと思うのである.

かつて忌野清志郎をして著書の中で
「彼女になら、俺は何だって話しちやぅょ」と言わしめた
元マネージャーの著者が惜しげもなく披露する珠玉のエピソード。
この世界が平和だった頃のゴールデンデイズをいまこそ語ろう。
あの頃、忌野清志郎と過ごしたー。

P.135

 88年、年明け早々、休む問もなく次回作『カバーズ』のレコーディングがはじまった。それも終わりにさしかかった2月,清志郎の父が心筋梗塞により他界する。2年前には母が永い闘病のすえに永眠していた。
 父の葬儀を終えたあと、母方・栗原本家の叔母が妹さんとふたりで、軽トラックに古ぼけた段ボール箱を積んで国立まで届けてくれたという。それは、栗原本家の蔵に33年間、保管してあった実母の遺品だった。清志郎は届けられた遺品の中にあった実母の写真をいつも持ち歩いては、とてもうれしそうに、みんなに自慢するかのように見せていた。

 1955年(昭和30)年2月27日、清志郎の実母の富貴子(ふきこ)は清志郎が3歳のときに胃がんで早逝し、1955年9月、実父である新井弘が、息子である清志(清志郎)と毅(たけし)のために、写真など妻・富貴子の遺品を保存した。
 清志郎は、子どもがいなかった富貴子の姉・久子と、その夫であり分家筋にあたる栗原康平の間で、養子として育てられることになり、弟・毅は新井家方に引きとられることになった。それ以降、清志郎の3歳までの実母との記憶と、実母の33歳までの記録は、本家の蔵でともに眠ることになる。

 富貴子の遺品には、最初の夫の記録が数多く残されていた。
 結婚後まもなく徴兵された夫は、激戦地レイテ島にて戦死し、1945年(昭和20年)12月12日に、富貴子は正式に除籍となった。
 戦地にいる若き夫と交わした軍事郵便や、戦争を批判した内容の富貴子が詠んだ短歌、やさしく扱わないといまにも朽ちてしまいそうな薄紙の「戦死公報」らが、自らの手によってきれいにスクラップされていた。
 富貴子は除籍後、約5年たった1950年(昭和25年)7月12日に、職場「日新化学」の同僚である新井弘と結婚。翌1951年4月2日、第一子・清志郎をもうけるのだった。

 それら実母の遺品を目にしたとき、清志郎はどう思っただろうか。完成寸前だったアルバム『カバーズ』を携えた清志郎が、反戦・反原発といったメッセージを歌詞に織り込んだことには、あまりにもシンクロニシティが働いている。
 清志郎はインタビュ―で、
「遺伝子に組み込まれているかと思った」
と語つている。

P.151

 87年11月6日より、FM大阪でオンエアーされていた深夜ラジオ番組『忌野清志郎の夜をぶっとばせ!』の収録時、空いた時間に清志郎三宅伸治はよくギターを弾いていたという。
 シンちゃん(三宅伸治)が、通称『赤本』というコ―ド譜のついた歌本を持参してジャカジャカやっていたときに、ザ・モンキーズの曲が目にとまり、『デイ・ドリーム・ビリーバー』を弾きながら、
「モンキ―ズはイイ曲が多いね」
「そうすね〜、ボス」
などと話していたそうだ。
すると次回の収録に、清志郎が『デイ・ドリーム・ビリーバー』の日本語歌詞を持ってきたという。そこでシンちゃんはオリジナルの『土木作業員ブルース』を作って持っていった。そんな高校生のようなやりとりが、次々に曲を生み、バンドや衣裳のアイディアを広げていった。

【関連読書日誌】

  • (URL)“昔のことなら笑いながら話せる。だって本当に楽しいことばかりだったから。未来のことなら笑いながら話せる。だって夢のようなことを実現できると思うから” 『忌野清志郎 瀕死の双六問屋 完全版』 忌野清志郎 新人物往来社
  • (URL)みんなが自分の本当の仕事を持っているのだ.  『瀕死の双六問屋  (小学館文庫) 』 忌野清志郎 小学館

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