“意外かもしれないが,地図製作に携わる人々は,四色問題を全然重視していない” 『四色問題 (新潮文庫) 』 Robin Wilson 著 茂木健一郎 訳 新潮社

- 作者: ロビンウィルソン,Robin Wilson,茂木健一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/11/28
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (9件) を見る

- 作者: Robin Wilson,Ian Stewart
- 出版社/メーカー: Princeton Univ Pr
- 発売日: 2013/11/10
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
こうした分野の翻訳,解説で著名な,竹内薫氏が,本書の解説で「名訳」であると言っているが,確かにたいへん良い訳である.単に日本語の質だけではなく,理解を助ける工夫がなされていることがよくわかる.
P.19
意外かもしれないが,地図製作に携わる人々は,四色問題を全然重視していない.
p49
ド・モルガンとハミルトンを引き合わせたのは,チャールズ・バベッジ(1830年頃)
p.86
オイラーの定理を証明したのは,ルジャンドル.
以下,本書のまとめ
1.四色問題:
(1)定義
・すべての国を4色で塗り分けることができるか
・一点で交わる国は同色にしてよい
・飛び地はないものとする
(2)
・考案者:フレデリック・ガスリー(1831-99)
・解決者:ヴォルフガング・ハーケン&ケネス・アッペル
2.歴史
(ア) 1852年ド・モルガン(UCL)からウイリアム・ローワン・ハミルトン
宛の手紙
3.用語
・国(領域),境界線,交点
・三枝地図:すべての交点がちょうど3本の境界線を持つとき
・n辺国:隣国がnヵ国ある国
・最小犯例:n色では塗り分けられない地図の中で,これより少ない国からなる地図はどれもn色で塗り分けられるもの
・可約配置:最小反例には含まれないような国々の配置
・不可避集合:その中の少なくとも一つがすべての地図に現れるような配置の集合
4.
・地図についてのオイラーの公式:
(外部領域を含めるならば)
F(国の数)―E(境界線の和)+V(交点の数)=2
・「隣国は五つだけ」定理:
どんな地図にも,五個以下の隣国しか持たない国が少なくとも一つある.
証明:すべての国が6以上の隣国を持つとすると
E ≧ 6F/2 = 3F ⇔ F ≦ 1/3・E
E ≧ 3V/2 ⇔ V ≦ 2/3・E
F-E+V ≦ (1/3 - 1 + 2/3)E = 0
これはオイラーの公式と矛盾.背理法により証明された.
・2,3,4辺国かなく,n個の5辺国があるとすると,
E ≧ (6(F-n) + 5n)/2 = (6F-n)/2 ⇔ F ≦ (2E+n)/6
E ≧ 3V/2 ⇔ V ≦ 2/3・E
2 = F-E+V ≦ (1/3 - 1 + 2/3)E +n/6 = n/6
∴n ≧ 12
・数え上げ公式
n辺国の数をC_nとする.3枝地図について
2E = 2C_2 + 3C_3 + 4C_4 + ...
3V = 2C_2 + 3C_3 + 4C_4 + ...
F = C_2 + C_3 + C_4 + ...
2 = F-E+V = \Sum_{i=2}(1+ (-1/2+1/3)i)・C_i
= \Sum_{i=2}((6 - i)/6・C_i
12 = \Sum_{i=2}((6 - i)・C_i
= 4C_2 + 3C_3 + 2C_4 + C_5 - C_7 - 2C_8 - 3C_9 + ...
・各国がr個の部分から構成されている場合,塗り分けには6r色が必要
十分性:ヘイウッド 必要性:ジャクソン&リンゲル(1984)
・トーラス上の地図に関するオイラーの公式:
F(国の数)―E(境界線の和)+V(交点の数)=0
・トーラス上の地図に関する「隣国は六つだけ」定理:
トーラス上のどんな地図にも,六個以下の隣国しか持たない国が少なくとも一つある.
(同様に背理法により証明可能)
・h個の穴があいたトーラス上の地図に関するオイラーの公式
F(国の数)―E(境界線の和)+V(交点の数)=2 - 2h
・ヘイウッド予想(1968年リンゲル&ヤングスにより証明)
h個の穴があいたトーラスの表面には,塗り分けに
H(h) = [(7 + \sqrt{1 + 48h})/2] ([]はガウス記号)
色を必要とするような地図が存在する
【関連読書日誌】
- (URL)“オイラーの水晶のように透明なラテン語は、西洋の学者たちがこの言語で書くのをやめたときに西洋文明が失ったものに気づかせてくれる” 『素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~』 John Derbyshire, 松浦俊輔訳 日経BP社
- (URL)“もし読者が本書を読み始めたときよりもそれ以上の疑問を抱いて読み終えたならば,私は大変光栄である.” 『バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ? 』 レーナード・M・ワプナー 佐藤宏樹, 佐藤かおり訳 青土社
【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

四色問題―その誕生から解決まで (1978年) (ブルーバックス)
- 作者: 一松信
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1978/04
- メディア: 新書
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (1件) を見る

- 作者: イアン・スチュアート,水谷淳
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2013/10/18
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る

これも数学だった!?: カーナビ、路線図、SNS (丸善ライブラリー)
- 作者: 河原林健一,田井中麻都佳
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2013/03/27
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る

- 作者: Lambert M. Surhone,Mariam T. Tennoe,Susan F. Henssonow
- 出版社/メーカー: Betascript Publishing
- 発売日: 2011/05/19
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る

The Four-Color Theorem: History, Topological Foundations, and Idea of Proof
- 作者: Rudolf Fritsch,Gerda Fritsch,J.lie Peschke
- 出版社/メーカー: Springer
- 発売日: 2013/10/04
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログ (1件) を見る