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“こうした彼女の行動には、少女時代に軍国主義の操り人形とされた過去への、強い自責の念が感じられる。アラブ問題に強い国会議員を18年勤め、鶴見俊輔や三木睦子らとアジア女性基金を設立、民間レベルでも元従軍慰安婦問題解決に腐心したことは、重要である” 『過去への自責の念行動に 女優・李紅蘭を悼む』 四方田犬彦 朝日新聞 2014年9月17日

女優山口淑子さん(李紅蘭)の訃報が伝えられた.山口淑子の名は,参議院議員の名前として,李紅蘭の名は,激動の時代を中国で生きた女優の名として,わずかに知っていた.特に後者については,何度かドラマ化されたのを見たことがある.最近のところでは恐らく下記であろう.

 中国で生まれ育ったこともあり,中国人女優として活躍してきた彼女は,敗戦後,中国侵略に加担した売国奴として死刑になるところであった.私が知っていたのは,テレビドラマを通じて知ったその人生の一面と,帰国後女優,司会者として活躍した後,参議院議員として自由民主党の代議士としてのその名前である.田中角栄の要請によるものであるらしい(山口淑子, http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%B7%91%E5%AD%90&oldid=52923951 (last visited Sept. 18, 2014). ).
 自民党代議士,田中角栄というところから得るイメージからは想像できない,戦後の山口淑子さんの活動を,この四方田犬彦氏による追悼文から知った.リオデジャネイロでその訃報を知った氏は,周囲に彼女のことを語り合う人間がいないことに孤独を感じたという.そして,

 わたしが親しく訪れた台湾やパレスチナの難民キャンプでは、おそらく事情はまったく違っているだろう。人々は70年前に台湾の少数民族の少女を映画で演じた李紅蘭を懐かしみ、自分たちの惨状に深い共感をもってドキュメンタリーを撮りあげたジャミーラ・ヤマグチに熱い思慕に念を送っているはずだ。
 一昔前だが、わたしが映画史家として山口さんにインタビューしようと東京・一番町のアパートメントを訪問したとき、彼女は自分のことをただ「ジャミーラ」と呼んでほしいと語った。それは難民キャンプでの日々に、パレスチナ解放機構アラファト議長から与えられた名前だった。

だが、日本人だと判明して帰国。その後、ハリウッドや香港でも活躍。70年代に入るとパレスチナ問題に積極的に関わり、日本赤軍をめぐるインタビューでテレビ大賞優秀個人賞を受賞した。
 こうした彼女の行動には、少女時代に軍国主義の操り人形とされた過去への、強い自責の念が感じられる。アラブ問題に強い国会議員を18年勤め、鶴見俊輔三木睦子らとアジア女性基金を設立、民間レベルでも元従軍慰安婦問題解決に腐心したことは、重要である。

山口淑子さんにインタビューして信じがたい話しをつぎつぎと聞いた氏は、いつかそれを纏めてみておこうかと考えている,と言う.楽しみに待ちたい.
【関連読書日誌】

  • (URL)“ダイモーンに対して取りうる最上の態度とは、それを避けることではなく、その声を耳を澄ませて聴き、そのいわんとするところを理解することだ。悲劇とは、自分のダイモーンを自覚できなかった者たちの敗北の物語にすぎない” 『再会と別離』 四方田犬彦, 石井睦美 新潮社

【読んだきっかけ】
【一緒に手に取る本】

李香蘭 私の半生 (新潮文庫)

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「李香蘭」を生きて (私の履歴書)

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戦争と平和と歌 李香蘭心の道

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男装の麗人・川島芳子伝 (文春文庫)

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